「神山まるごと高専」名だたる企業が熱視線のワケ 起業家たちがつくる「15歳からの新しい学び」
こうした「言葉」で表現する力をはじめ、ビジョンやアイデアを思い描く「絵」の力、エビデンスに基づき論理的に思考する「数字」の力、思い描いたビジョンやアイデアを実装するための「プログラミング」の力を総合的に鍛え、「モノをつくる力」を身に付ける。
そして、何かとたたかれやすくなった社会の中でも恐れずに「コトを起こす」ため、「ポジティブ心理学」などを通じて失敗を乗り越える力「レジリエンス」も養う。また、将来はさらにリモートワークや地域でのシェアリングエコノミーが広がり、IoTの進展でスマートシティー化していくことが予想されるため、「隣人と生きる力」や「人と一緒につくる力」の強化も重視する。こうした「社会と関わる力」を育てたいからこそ、神山町にこだわった。
「人口約5000人の自然豊かなこの町の中には、農家、伝統工芸家、建築家、芸術家などがいて、企業のサテライトオフィスも集まっています。多様な人たちの力を借りて、社会課題を解決していく実践の場とすることが可能なのです。だから、校名の『まるごと』は、神山町全体がキャンパスという意味。地域に関わることでどんな業種や職種があるか、地域経済はどう回っていくのかを学び、リーダーシップや協働性を養っていってほしい。町も歓迎してくれていて、農作物の栽培を行う食育の授業や、動物の飼育、サバイバルキャンプなど、地域とコラボレーションしたプロジェクトを考えています」

「21世紀版バウハウス」を目指す!
伊藤氏が意識しているのは、1919年に設立され、現代建築・デザインの礎を築いたといわれるドイツ・ワイマール共和政時代の総合芸術学校「バウハウス」だ。
「『デザインの力で社会を変える』を旗印にしたバウハウスのように、われわれも『デザインとテクノロジーの力で自らコトを起こし、社会を変えていく人を育てる』を旗印にしています。目指すのは、21世紀版バウハウスです」
卒業後の進路は、就職が3割、編入が3割、起業が4割をイメージしている。起業に関しては、「スタートアップに限らず、家業を継ぐ子、アーティストなどいろいろなタイプの起業を応援したい」と言い、企業からメンターとしてのサポートと資金サポートを得られるよう動いていく。
「ほかにもさまざまな出口を想定しています。英語はかなりの授業時数を確保していて、ビジネスで使う専門英語の授業や、ネイティブスピーカーやオンラインを活用した英会話の授業も行い、海外留学にも対応できるようにしていきます」と、伊藤氏は話す。
開校資金に必要な約21億円は、民間企業や個人の出資、マクアケのクラウドファンディングで集めた5300万円などにより準備が整い、教員の採用もほぼメドが立った。2021年10月、いよいよ設置認可の申請を行う。
カリキュラムの調整や入試準備のほか、経済的理由で子どもたちが進学を諦めなくて済むよう奨学金基金の設立も進めており、乗り越えるべきハードルはまだたくさんある。しかし、企業を中心に外部からの期待は大きく、引き続き開校の実現とその後の展開に注目が集まりそうだ。
(文:田中弘美、写真と資料はすべて神山まるごと高専設立準備財団提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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