大学受験それでも「英語民間試験」受けるべき理由 共通テストで導入断念も私立中心に活用広がる
共通テストで「全員に英語の民間試験を課す」には無理があった
こうした状況を大学入試に詳しい専門家は、どう見ているのか。駿台教育研究所 進学情報事業部長の石原賢一氏は、こう話す。
駿台教育研究所 進学情報事業部長
(写真は駿台教育研究所提供)
「英語の民間試験を活用する流れは、これからも私立大学を中心に広まっていくとみています。もちろん賛否両論はありますが、リモートワークが必至となったコロナ禍で、ビジネスの現場では各国とオンラインで会議をする機会が増えています。これからの社会を生きていく若者たちにとっては、世界共通語である英語は必要不可欠です。
その意味でも民間試験を活用するという考えはよかった。しかし、それができなかったのは制度設計の段階で見通しが甘かったからです。約50万人の受験生に民間試験を受けさせるというのが本当に現実的に可能だったのか。本来なら、強制的に全員に課す必要はなかったはずで、その段階で無理がありました。もっとうまく導入すればよかったのですが、今回見送りとなったことで、将来的に共通テストで民間試験を一斉に活用するハードルは非常に高くなったと思います」
私立大学では、立教大学のように英語力のある学生を集めることで、多数の受験生の活性化を図ろうという大学が増えている。だが逆に、国公立大学では民間試験の導入に消極的なところが少なくない。一部、先進的な考えを持つ大学では活用を進めているというが、このまま国公立では民間試験の活用は進んでいかないのだろうか。「ポイントとなるのは、その使い方」(石原氏)だという。
思い起こせば、かつて私立大学で当時のセンター試験を利用する大学は少なかったが、今や全私立大学の9割が活用するようになっている。石原氏は、そのように少しずつ進めていれば、民間試験の導入も頓挫することはなかったと指摘する。とくに昨年と今年は、コロナ禍で民間試験自体も十分に実施できなかったことから、時期的にも導入に無理があったとみられる。
これから少子化が深刻化していく中で、大規模な入試は大きな岐路を迎える。「これまでの入試は、たくさんの受験生を効率よく選抜するための手段だった」(石原氏)が、今後は受験生の数が大きく減少していくため、大学は受験生に選んでもらう時代に突入する。だから私立大学だけでなく、国公立大学でも入試改革は待ったなしであり、各大学はアドミッション・ポリシーに合わせて独自色を出していくべきではないだろうか。
その意味でも「英語の民間試験の利用について、国公立大学も各大学の判断に任せてもいいのではないか。定員を分けて、独自の試験や科目の配点を変えるなど選抜方法はいくらでもある。そのためにも、これまでのような規制を文科省は見直すべき」と石原氏は話す。
今後、大学受験の英語はどう対策を行うべきか
では、受験生はどう英語の対策を行っていけばいいのか。今後、学校での指導を変える必要も出てくるのだろうか。
「すでに民間試験を活用する学校は多くなっています。高校1年生か、あるいは中高一貫校では中学から、英検などの民間試験を活用しています。昔と比べても、いわゆる英語の4技能を使うことには慣れてきている。今年の英語の共通テストでは大きく出題傾向が変わりましたが、それほど大きな混乱はありませんでした。大人が思っている以上に生徒たちは対応できたのです。とくに生徒のリスニング能力は、この10年で明らかに向上しています。新しい学習指導要領でも対応済みで、そうした流れにうまく乗って、民間試験にチャレンジしていく。そんな姿勢がこれから重要になってくると思います」

















