公立も導入「オンライン国際交流授業」急増の背景 新渡戸文化の夏休みプログラムをリポート
ところが、コロナ禍で状況は一変。それまでオンラインプログラムを採用するのは新渡戸文化中学・高等学校と関西学院高等部のみだったが、この1年半で問い合わせが急増した。20年5月から提供を始めた「オンラインスタディーツアー」を含むオンラインプログラムの導入は、私立校を中心に60校(中学・高校・大学の合計)まで増えている。
「SDGsを授業で扱いたい学校や、今後の社会を見据えてアジアの英語に触れさせたいという学校が年々増えています。そうしたニーズの変化も大きい」と、五十嵐氏は話す。
同社のプログラムは、SDGsなどの社会問題について考えて議論する授業を軸にしており、学校や教員の希望に合わせてオーダーメイドで作る。「米国の大学生とつなぐプログラムが多い中、アジアの同年代の子どもたちと協同作業する環境を調整できるのも特徴」(五十嵐氏)で、アジアのみならずイスラエル、パキスタン、ザンビアなどの国と交流できる点も珍しいため、学校現場からの引き合いが多いのだという。
しかし、実は海外からのほうが、依頼が増えている。昨年度は姉妹校同士の口コミを通じて、インドネシア、エジプト、フィリピン、インドなどを中心に導入校が増加。現在、60カ国350校で提携実績がある。日本の学校とつながりたい国は多く、日本はすぐマッチングが埋まるという。
「GIGAスクール構想で配られた端末の活用が進めば、海外とつながる授業が当たり前になるかもしれない」と、五十嵐氏は考える。実際、国際交流や外部講師などの予算を使い、オンラインでの国際交流を行う公立校が増えているという。同社のオンラインプログラムは、2コマで1人5000円が目安。とくに端末整備が整った21年度は教育委員会のほか、総合的な探究の時間や英語科を担当する教員からの問い合わせが増え、「1クラス分ならできそう」「月に1度なら可能かも」と検討を始めるケースが出てきているという。

(写真:兵庫県立国際高等学校提供)
例えば、教育委員会経由の依頼では、滋賀県立守山高等学校とバングラデシュの高校をつなぐ文化交流や、過疎化が進む福岡県遠賀郡水巻町立水巻中学校と水巻南中学校がインドネシアのジャカルタとつながる授業などを実施。学校単位の依頼では、淡路島にある兵庫県立洲本実業高等学校がバリ島とつながり、共通の観光課題について意見交換を行った。
関西学院高等部とザンビアの交流後に行ったアンケートでは、参加生徒の95%が「現地に行きたい」と回答した。子どもたちの反応から、「新型コロナの収束後も、まずはオンラインで海外学習のハードルを下げてから現地に行く」というオンラインとリアルの二段構えで海外交流を考え始める学校も少なくないという。
新型コロナウイルスの収束の見通しが立たない中、オンラインを活用した国際交流のニーズや学びの可能性は、まだまだ広がっていきそうだ。
(文:編集チーム 佐藤ちひろ、注記のない写真はWith The World提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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