公立も導入「オンライン国際交流授業」急増の背景 新渡戸文化の夏休みプログラムをリポート

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その後、4グループに分かれ、同NPOが支援する5歳~10代のザンビアの子どもたちと交流を開始。現地の補助スタッフによるアイスブレーキングゲームや、「Hello!」と元気に語りかけてくる子どもたちの明るさに触れ、生徒たちも笑顔が増えていく。

徐々に緊張がほぐれる中、英語で自己紹介を行い、互いの学校生活を説明し合った。新型コロナウイルスの感染対策や水の安全性などさまざまな質問をする生徒たち。ザンビアのスラム街や文化を紹介する映像を閲覧した後の交流では、「子どもを保護する施設が足りていないように思うが、数はどれだけあるのか」といった、より社会課題に迫る質問も出た。

夏休みのため、生徒は自宅からアクセス。ザンビアツアーの参加費用の一部は寄付として、より多くの子どもたちが教育を受けられるよう学校の教室の増築に使われる

英語を積極的に話す生徒もいれば、友達に助けを求める生徒、緊張して話せない生徒など参加の様子はさまざま。しかし、困ったときには大学生のスタッフが「日本語でも大丈夫」と励ますなど状況に応じて支援するので、徐々に主体的に発言するようになっていく生徒も見られた。

例えば、ある生徒は1つの単語がわからず言葉に詰まってしまったが、スタッフからチャットで単語を教えてもらったことで説明に成功。言いたいことが相手に伝わり喜ぶ姿に、筆者もうれしくなった。

最後は各自が学んだことを共有し、「相手の言葉の1単語でもわかったり、自分の一言が伝わったりするだけでもとても価値がある。もし今日、後悔があるなら明日ぜひチャレンジしてください」という山本氏のメッセージで締めくくられた。

オンラインは「どこでもドア」のように活用できる

2日目も基本構成は同じだが、前半は「私の好きな自国の食文化」をテーマにディスカッション。生徒たちは自作のスライドを画面共有し、英語でみそ汁やすしなどを紹介した。食は身近な話題なだけに互いに興味津々で、1日目よりも盛り上がるグループが多かった印象だ。保護施設の生活や卒業生のインタビューを紹介する映像の閲覧を挟み、ザンビアの子どもたちと将来の夢を語り合って交流を終えた。

画面越し、かつ、わずか2日間の交流だったが、ザンビアの子どもたちが持つ明るさや、彼らが将来を見据えて勉強している点などが気づきや学びにつながった生徒が多いようだ。寄付への意識がより高まった生徒も少なくない。

「募金をするだけでなく、呼びかけもしてみたい」と話すのは、山下大翔さん(高校1年)。張家ヰエナさん(中学1年)は、ツアーの合間にインターネットで具体的な寄付や支援方法を調べたという。草鹿結さん(高校2年)は、「SDGsの1番に掲げられる貧困問題はもっと広い認知が必要。そのためには、安心して募金ができる認証マークを作るなども1つの方法ではないか」と語った。

ツアーを終え、山本氏はこう話す。

「生徒たちが、普段学んでいることがリアルの社会とつながっていると理解することが大事。今回のツアーもそれを考える機会の1つです。オンラインは移動時間をかけずに授業でもつながれる利点があるので、新型コロナに関係なく今後も『どこでもドア』のように活用していきたいと思います」

GIGAの影響で公立校でも導入が増加

ツアーを協同で実施したWith The World代表取締役社長の五十嵐駿太氏によれば、オンラインによる国際交流のニーズは高まっているという。同社は、18年4月に創業した教育ベンチャー企業だ。当初からリアルの「海外スタディーツアー」と「オンライン国際交流授業」の2つのプログラムを提供してきたが、当時は対面がよいと考える学校がほとんどだったという。

五十嵐駿太(いがらし・しゅんた)
With The World代表取締役社長。大学在学中にフィリピンのスラム街の子どもたちと交流した経験を機に世界の現状を学ぶ。大手人材会社で営業や新規事業開発を経て、2018年に同社を起業
次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事