高校生「日本を捨てて海外大学」が激増の理由 「超進学校」で、海外進学者が増加の背景とは?
日本では、国際バカロレア認定が主流となりつつあるが、それでは日本の国際バカロレア認定校で学ぶのと、インターナショナルスクールで学ぶのとでは、何が違うのか。例えばICTにおいてはどうだろう。それについては明確な違いがありますと、村田さんは語った。
インターナショナルスクールでの、ICT活用の取り組みは?
「インターナショナルスクールでは、情報のインプットに関しては、ICTよりもリアルな体験を学びの土台に置いている学校が多いです。例えば、子どもたちが触れる絵本。これは、あえて紙の本を使い、手触りや質感を楽しみ、物語を一緒に読むという行動そのものを学びとしています。中高生になって『American History』を読む際にも、図鑑のように分厚い書物を使い学びます。一方、アウトプットとしては、プリスクールの年長クラスからiPadを使ったスクラッチを取り入れて、プログラミングを行うなど、低年齢からICTを取り入れるケースが多いですね。小学校低学年にもなれば、子どもたちはキーボードで文章を作成し、日記などのアウトプットも、デジタルツールで行うことが多くなります」
全体的には幼児・小学生は紙がメインで、デジタルはあくまで副教材として適宜ICTを取り入れている場合が多いそうだ。より学びが進み、テーマ学習になると、紙からデジタルへの移行が進む。また、日本の学校との大きな差として、リポートや宿題の提出をPCで行うことが挙げられると語る村田さん。
「日本ではタブレットが1人1台配布されても、持ち帰りは不可の場合が多いですよね。インターナショナルスクールでは授業中だけではなく、各生徒が機器を持ち帰って、宿題もPCで行います。デジタル機器との接し方の違いはあるかもしれませんね」
そのほかには、アートを重視したり、自然との関わりや、情操教育を大切にしているのもインターナショナルスクールの特徴だ。STEAM教育もその情操教育の延長線上にあるという。
「ミュージカルのクラスや、油絵から派生したICTを活用したデジタルアートの取り組み、音楽プログラムを作成するDJの授業などもありますね。そのスキルを音楽として、きちんと評価する基準があり、例えばTiKToKもパフォーミングアートとして認めます。時代の変化に応じて、柔軟にカリキュラムを変えていけるのがインターナショナルスクールの強みなのかもしれません」
インターナショナルスクールの台頭に加えて、私立校で国際バカロレア認定を取得する学校も出てきており、日本人の高校生にとっては多様な学びの機会が広がっていることは間違いない。日本の学校もまた大きなうねりの中で変化し続けるだろう。この先も海外の大学への進学熱は冷めることなく続いていくのか。ユニークな取り組みが行われているインターナショナルスクールを見ることで、その行く末が予測できるかもしれない。一人ひとりの個性を最大限に引き出して伸ばす教育のあり方としても、インターナショナルスクールの取り組みは1つの参考になりそうだ。

国際教育評論家、「ieNEXT」編集長、「インターナショナルスクールタイムズ」編集長。米カリフォルニア州トーランス生まれ。人生初めての学校である幼稚園をわずか2日半で退学になった「爆速退学」の学歴からスタート。帰国後、千葉・埼玉・東京の公立小中高を卒業し、大学では会計学を専攻。帰国子女として、日本の公立学校に通いながら、インターナショナルスクールの教育について興味を持つ。2012年4月に国際教育メディアである「インターナショナルスクールタイムズ」を創刊し、編集長に就任。その後、都内のインターナショナルスクールの理事長に就任し、学校経営の実務を積む。その後、教育系ベンチャー企業の役員に就任、教育NPOの監事、複数の教育系企業の経営に携わりながら、国際教育評論家およびインターナショナルスクールの経営とメディア、新規プロジェクトの開発を受注するセブンシーズキャピタルホールディングスの代表取締役CEOを務める
(撮影:今井康一)