小中「1人1台端末」本格活用を阻むコストの壁 渋谷区「教育ICT基盤」が問う、整備後の行く先

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教育におけるICTの持続的な活用、最大の壁はコスト?

だが、これだけの充実したICT環境をすべての自治体が整備できるのか、となると話は別だ。最大の課題はコストだろう。渋谷区が新しい教育ICT基盤にかけたコストは、破損リスクを考えた端末リース費用、ネットワーク環境整備なども含めて14億5000万円。その大半が区財政からの持ち出しになる。

さらに、データセンターの教育情報基盤の運用経費が毎年13億5000万円かかる。渋谷区は基盤設計をほかの自治体とも共有し、同じ機材やサービスを採用してもらうことでスケールメリットによるコスト節減を期待するが、目下の端末配備、活用に奔走するほかの自治体の反応は鈍い。

端末の活用はもちろん、端末から得られるデータをどう活用するのか、校務の効率化にどうつなげるのかまで考えなくてはならない

端末の配付までには、すぐに使える状態にするために各種設定や、アプリケーションのインストールを行うための準備作業も必要だ。渋谷区では、その準備作業だけでも約1億円がかかった。宇都氏は「端末は購入したら使えるというものではない」と指摘する。

国は、GIGAスクール構想の端末購入や校内LAN整備は補助するが、それ以外の費用は、標準的な行政を行うためにかかるコストの積算に含めている。国は、標準行政と自治体の地方税収との差額を埋める形で地方交付税を交付するため(東京都は不交付団体)、現状では各自治体が手当てする前提だ。

そのため、政令指定都市の市長会(指定都市市長会)は、GIGAスクール構想を持続可能なものとするため、端末更新時の費用を国庫補助対象とするなど「継続的かつ十分な財政支援」を求める要請をしている。教育ICT化の実現は、端末配備だけではできない。さらに何が必要なのか。どこまでやるのか。渋谷区の取り組みは、そうした問いを投げかけている。

(注記のない写真は渋谷区教育委員会提供)

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制作:東洋経済education × ICT編集チーム

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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