シュワルツェネッガーとトランプが憎み合う訳 「かつては友人だった2人」がなぜ犬猿の仲に?

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その後も、ふたりの罵り合いは続く。

トランプがパリ協定から離脱を表明すると、環境問題に強い関心を持つシュワルツェネッガーは、「誰も昔に戻ることはできない。私にはできるが」と、『ターミネーター』に引っ掛けたジョークを言いつつ、後ろばかり見て、未来のためにクリーンエネルギーに投資しようとしないトランプを批判。

一方でトランプは、2019年夏、ホワイトハウスに集まったレポーターに向かって、「アーノルド・シュワルツェネッガーは死んだよ。私はそこにいたんだ」と言っている。

その報道を聞いたシュワルツェネッガーは、「まだ生きているよ。確定申告を見せっこする?」と未だに税金申告の内容を公表しないトランプをからかった。

トランプの憧れはシュワルツェネッガー?

どうしてふたりの争いはこんなに尾を引くことになったのか。それについてはシュワルツェネッガーが、2019年秋、男性フィットネス雑誌「Men’s Health」の取材で明かしている。『ターミネーター:ニュー・フェイト』の公開に合わせて受けたこのインタビューで、シュワルツェネッガーは、「トランプは自分に憧れているのだ」と言ったのだ。

その根拠として、シュワルツェネッガーは、ふたりの仲が良かった頃、一緒に見に行ったレスリングの試合で、完璧な肉体を持ち、パフォーマーでもあるレスラーたちをトランプが崇め、褒め称えていたことを挙げた。

シュワルツェネッガーも元ボディビルダーの肉体を持ち、映画で人々を魅了する人気者だ。「彼は私を愛しているんだ。彼は私になりたいのさ」と、シュワルツェネッガーは、トランプが自分に執着する理由を語っている。

レスリングの試合中、トランプは映画で本当には起こっていないシーンをどう信じさせるのかについても、シュワルツェネッガーに聞いてきたという。「どうすれば人にそれを本物だと思わせ、人の心を動かせるのか」を、トランプはひたすら知りたがった。

そして今、トランプはそれを半ば成功させたわけである。彼の言う嘘を信じた人々を暴力行為に駆り立てたのだ。しかし、トランプの小手先でやれることには限界がある。

民主主義は、ひとりの人間よりも大きく、強い。今週、シュワルツェネッガーが投稿した動画で言っているように、民主主義は、コナンの剣のように、打たれれば打たれるほど強くなるのだ。

映画に出てくる正義のヒーローに憧れるのなら、トランプは今こそ、すっぱりと潔く退いたほうがいい。二度目の弾劾を待つまでもなく、辞職するしか道はない。途中までひどかった映画も、エンディングがよければ多少印象は変わる。ここで格好よく立ち去っていけば、シュワルツェネッガーもきっと、お褒めのツイートをくれるはずだ。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
X:@yukisaruwatari
 

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