富士急「格安賃料」、山梨県知事が下した決断 自衛隊・北富士演習場への「二重貸与」も判明
――富士急との間で、賃料の決め方について見解の相違がありますね。
適正な賃料は時価に基づくものであり、それよりも安い価格で契約を締結してはならないことが、最高裁判所の判例でも明らかにされている。ところが本件の場合はそうなっていなかった。別荘地として利用されていながら、山林原野という、土地を造成する前のもともとの土地の状態に基づく「素地価格」を前提に賃料が決められていた。
今般実施した不動産鑑定評価の結果と比べた場合、従来の賃料との間に年間17億円もの差があることがわかった。本来県が得られるはずの利益を得られない状態が長年にわたって続いてきた。
県有地の一部を「二重貸与」
――富士急の主張のどこに問題があるとお考えですか。
富士急は、投資を行うなど自らの努力によって県から賃借した別荘地の価値を高めてきたとし、価値の増加分のすべてが自社に帰属すると主張している。この考え方では、国や県、地元市町村による公共投資、観光振興政策による資産価値の向上が賃料にまったく反映されておらず、きわめて理不尽だ。
問題はそれだけではない。富士急に有利な形で不動産価値が低く算定されてきたことにより、地元の山中湖村も不利益を被っていることがわかった。
県有地については、県が地元自治体に対して固定資産税評価基準に基づき、固定資産税に相当する額を支払うことが国の法律によって定められている。県は今まで、別荘地として開発する前の山林原野を前提として価格を算定し、その価格を山中湖村に通告してきた。その結果、本来支払う額とのずれが年間で億円単位にのぼることもわかってきた。県の算定にミスがあった以上、これについてもすみやかに是正しなければならない。
また、富士急に貸している440ヘクタールのうち、17ヘクタール分については、北富士演習場の一部として国に貸した形になっている。この二重賃貸は1973年度以降、半世紀近くにわたって続いており、富士急が何の努力もしていないのに貸付料と演習場交付金の差額として総額1.6億円もの利益が同社に提供されていることもわかった。
――歴代知事の責任について和解案では、県庁内に検証委員会を設置したうえで、損害賠償請求権の有無などについても調査するとされています。
富士急への県有地の賃貸について、議会を通さずに格安な賃料による契約を締結していた。これは明らかに手続き違反だ。
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