韓国で急増する「宅配過労死」その悲惨な現状 政府の保護から外された苛烈な通販現場

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韓国で配達員は最もきつく、そして最も守られていない仕事の1つだ。2015〜2019年に配達員の死亡は毎年1〜4人だったの対し、韓国産業安全衛生公団がヨン・ハイイン議員に提出したデータによると、今年は前半の半年間だけで9人が亡くなっている。

文大統領は2018年、「ワークライフバランス」と「休む権利」を確保するために1週間の労働時間の上限を68時間から52時間へと大幅に引き下げたが、これは配達員には適用されなかった。一方、新型コロナの感染拡大で宅配需要は急増。配達員たちは長時間労働だけでなく、山のような仕事量に押しつぶされる恐怖感に常にさいなまれていると話す。

「弾丸速度」の熾烈競争

世界中でネット通販が急増する中、韓国の宅配需要は今年36億個へと30%増えたと一部では推計されている。

韓国では宅配の荷物の大半を大手の運送会社が取り扱っているが、こうした会社は配達を配達員に外注している。配達員は自営の下請け業者で、歩合制。自前のトラックを使い、割り当てられた地域で配達を行う。ネット通販の人気が高まり、競争が激化した1997年以降、ネット通販の配送料は半分以下にまで落ち込んだ。

ショッピングモールや運送会社は宅配スピードを競い合い、今では「当日中」「日の出前に」「弾丸スピード」といった選択肢が提示されるようになっている。ところが、配達員が手にする料金は低下し、現在では荷物1つにつき60〜80セント(約62〜82円)。大手通販業者が設定した配達期限に遅れた場合には、ペナルティとして罰金まで徴収される。

10月7日、ソウルで配達員をしているキム・ドンヒさんは午前2時に帰宅。しばらくして倉庫に戻り、420個の荷物を受け取った。翌日午前4時28分に仕事仲間にメッセージを送ったときにも、未配達の荷物をたくさん抱えていた。午前5時には帰宅するつもりだが、すぐに仕事に出かけなければならないから、食事したりシャワーを浴びたりする時間はほとんどないだろう、とキムさんは言っていた。

「とにかくヘトヘトだ」。メッセージにはそう書かれていた。

4日後、キムさんは仕事場に姿を見せなかった。仲間たちが自宅に様子を見に行くと、キムさんはそこで死んでいた。警察は死因を心不全とした。仲間たちは、キムさんは働き過ぎで死んだと言う。まだ36歳だった。

キムさんが仲間にメッセージを送ったのと同じ日、ソウルではキム・ウォンジョンさんという別の男性が配達途中で倒れ、胸の痛みと呼吸困難を訴えた後に死亡した。

「夜も遅い時間で、ものすごく疲れている様子だったのを覚えている。肩は落ち、帽子を目深にかぶって、半分意識がないように見えた」。キムさんの死がニュースになってから、本人を知る客の1人がネット上にこう書き込んだ。

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