中高を視野に「プログラミング授業」は小1から 教員のためにも今は早い時期から始めるべき
ではその授業は、どのような考え方でつくればいいのだろうか。授業設計に欠かせないのはゴールの設定だが、全国の教員・教育機関にプログラミング教育の研修や教材を提供するNPO法人みんなのコードの代表理事、利根川裕太氏はそのハードルを低くしたほうがいいと忠告する。
「教員の皆さんは熱心なので、『子どもたちに喜んでもらおう』と張り切るんですが、いろいろ盛り込みすぎてしまって授業がうまくいかないケースが多いです。とりわけ最初の授業は欲張らず、基本的な事項を押さえることを目的としたほうがいいと思います。それでなくともプログラミング教育は未到の領域なんですから、無理に工夫を凝らさず、事例をそのままなぞる感覚でいいくらいです」
それでは物足りないと感じる教員もいるだろうが、初めての試みはトラブルがつきもの。無謀なチャレンジで収穫を減らしてしまうよりも、まずは無事に終えることを優先したほうが実りを得られるということだ。もちろん、慣れるに従って徐々にハードルを上げればいい。小学校での研究授業の指導も多数実施してきた東京学芸大学ICTセンター教育情報化研究チームの加藤直樹准教授は次のように語る。
「授業が散漫になるのでゴールを設定することは大切です。他の教科でも児童のレベルはさまざまですが、プログラミング教育ではより差が大きくなりますので、複数のゴールを用意するのもいいでしょう。また、子どもたちをうまく成長させるためにも、『並べた順番に動く』ことを理解してもらうことを最初の目標にして、だんだんレベルを上げていくことが重要です。そのためにも6学年を通した系統的な目標立てが大切です」

東京農工大学大学院工学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て2004年より東京学芸大学准教授。博士(工学)。ペン入力を採用したインターフェースのデザインやシステムの開発および教育の情報化に関する研究、教員養成へのICT活用、教育の情報化に対応できる教員の養成に取り組んでいる。著書に東京学芸大学プログラミング教育研究会が編集した『小学校におけるプログラミング教育の理論と実践』(学文社、共著)がある
(撮影:今井康一)
いわば「目標は高く、目線は低く」だ。利根川氏は最初こそハードルは低くすべきと主張するが、最終的な到達点としてのゴールは見据えておいたほうがいいという立場だ。
「究極の目標は、『身近な困り事をテクノロジーで解決できる児童になる』ことだと考えています。離れた場所に住んでいるおばあちゃんが困っていることとか、同じ小学校の1年生が困っていることなど、何でもいいと思うんです。コンピューターを適切かつ効果的に活用して生活や社会を改善、発展させられる力を身に付けることが、Society 5.0時代に求められるのではないでしょうか」