中高を視野に「プログラミング授業」は小1から 教員のためにも今は早い時期から始めるべき

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利根川氏の指摘は、新たな学習指導要領で言及されている「新しい時代を生きる子どもたちに必要な『学びに向かう力、人間性』『知識及び技能』『思考力、判断力、表現力』」をわかりやすくかみ砕いたものともいえよう。さらに松田氏は、これらの力をおのずと育める構造を有しているのがプログラミング教育だと主張する。

「プログラミングは、やりっぱなしにならないんです。子どもたちが起こしたアクションに対し、コンピューターを介して即座に反応が返ってくるわけですから。いくらでもトライ・アンド・エラーが繰り返せますし、それによってさまざまな気づきも得られますので、一方通行ではなく自動的に双方向の学びができるんです」

中学・高校・大学入試からの逆算で導く「開始時期」

従来の教育とはまったく異なるという認識を持ち、目標は高く掲げながらも足元では欲張らずに臨む――。3氏の意見を統合したプログラミング教育への基本スタンスはこうなるが、具体的な授業設計に臨むうえで難問が1つある。「何年生からスタートすればいいのか」ということだ。文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引」や学習指導要領には明記されていない。加藤准教授は次のように説明する。

「5年生の算数と6年生の理科の教科書にプログラミング教育の内容が掲載されていますが、それはあくまでも学習指導要領に例示されたため掲載されたもので、何年生以下はしてはいけないとか、何年生から始めなくてはいけないといったことも定められていません​

裏を返せば、何年生の授業でも自由に取り組めるということだ。利根川氏は、低学年での授業を多数経験しているほか、プログラミング教育の下地づくりにつながる新たな取り組みも始めていると明かす。

「『みんなのコード』の研修を受けた先生が、1・2年生の研究授業をするケースは珍しくありません。そのときにはViscuit(ビスケット)という簡単にできるビジュアルプログラミング言語がよく使われています。先進的な取り組みとしては、2020年10月に宮城教育大学附属小学校の2年生の研究授業で、コンピューターが絵や画像を表現する仕組みをドット絵で再現するという取り組みをサポートしました。コンピューターがどういうものかを自然に理解できますので、3年生以降のプログラミング教育が受けやすくなりますし、Society 5.0時代の適応力を養うことにもつながったと思っています」

NPO法人みんなのコード 代表理事 利根川裕太
慶應義塾大学経済学部卒業後、森ビルを経て、ラクスルへ。その後、特定非営利活動法人みんなのコード設立。著書に『先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本』(翔泳社、共著)、『なぜ、いま学校でプログラミングを学ぶのか-はじまる「プログラミング教育」必修化』(技術評論社、共著)がある
(撮影:今井康一)

一方、「逆算」の視点を提示するのは松田氏だ。中学校や高校での学びについていけるのかを考慮すると、できるだけ早めにプログラミングに取り組んだほうがいいという。

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