菅首相、「解散権行使」へ取りうる2つの選択肢 コロナ禍での「年内解散」に踏み切れるのか

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今後の政治日程も考慮して解散と総選挙のスケジュールを予測すると、「年内」と「年明けから来春」、「来秋」の3つの選択肢が浮かび上がる。まず年内のケースだが、臨時国会が10月23日か26日に召集された場合、所信表明・代表質問後に菅首相が解散に踏み切れば、11月10日公示―同22日投開票の日程が有力だ。

ただ、11月中下旬には菅首相の首脳外交の初舞台となるAPEC首脳会議(11日~12日)やG20首脳会議(21日~22日)に加え、3日のアメリカ大統領選で現職のトランプ氏が再選した場合には、中旬にもワシントンでのG7首脳会議(サミット)開催も想定される。解散すれば菅内閣は「職務執行内閣」となるため、「外交儀礼上はありえない」(外務省幹部)との指摘が多い。

自民党は臨時国会の会期を12月上旬までの50日間程度とする方針で、年内に国会での議決が必要な日英経済連携協定(EPA)や2021年夏の五輪開催に伴い、祝日を移動させる特別措置法案などを処理する構えだ。ただ、「召集から案件処理まで最低でも3週間以上が必要」(自民国対)とされる。

コロナで総選挙どころではなくなる

そこで、自民党内で浮上してきたのが、国会での案件処理を前提とした「11月中下旬解散―12月6日か13日衆院選投開票」という日程だ。その場合、公示は11月24日か12月1日となり、選挙期間が首脳外交と重なる事態は回避できる。併せて、手続き的には12月中下旬に特別国会を召集し、首相指名・組閣を経て第2次菅政権を発足させれば、遅くとも1月上旬までに2021年度予算案の編成が可能だ。

ただ、晩秋から初冬を迎える時期だけに、多くの医療関係者は「コロナの感染再拡大で選挙どころではなくなる」と予測する。菅首相自身も「コロナの感染拡大防止と経済再生がなにより優先される」と繰り返しており、選挙中に感染再拡大ともなれば、「菅首相の責任も問われ、選挙での自民議席減にもつながりかねない」(自民幹部)との不安も広がる。

次の解散の機会は、年明けの通常国会での冒頭か、コロナ対策のための第3次補正予算成立直後の解散だ。1月上旬に通常国会を召集すれば、補正を処理しても1月下旬までの解散が可能だ。その場合、最も早いケースは「1月26日公示―2月7日投開票」となる。

ただ、衆院選を受けての特別国会召集は2月中旬以降となり、首相指名と第2次菅政権発足を経て、改めて施政方針演説や各党代表質問を実施する必要がある。2021年度予算案の衆院審議入りは2月末以降にずれ込み、予算の年度内成立は極めて困難となる。

2021年度予算成立後の3月末か4月初めの解散説もあるが、7月上旬に想定される東京都議選に全力投球したい公明党が強く反対している。菅首相は公明党・創価学会と太いパイプを持っているのが強みとされるだけに「公明の離反を招くような解散はするはずがない」(自民選対)との見方が支配的だ。

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