埼玉県戸田市教育委員会教育長が語る「AIに負けない教師の条件」 小中「PC1人1台」教師に求められる資質は
とはいえ、決まったアルゴリズムに基づいて問題を出しているだけのAIは、子供の心や感情を読み取りながら、一人ひとりの興味関心に応じた問題などを出すことはまだできていません。つまり、「予定調和」から脱せておらず、知識・理解や技能などを測る個別化はできても、興味関心に基づく最適化まではできていないと思います。
教育現場において重要なのは、子供のちょっとしたしぐさや表情などの非言語を敏感にキャッチして、個人差に応じた最適な問題を出してあげたり、助言したりすること。教師の経験や勘が問われるのは、まさにこういったところです。それができるのが、匠の指導だと考えています。

―教育現場に携わる方々へのメッセージをお願いいたします
大事なのは、教師自らが社会に開かれた存在になること。「自ら課題を見つけ解決していく」というのは、子供たちだけでなく、私たちのような教育現場の関係者にも求められています。
現場のかゆいところに手が届くような体制づくりは、教育行政の役割。戸田市教育委員会では、あくまでも各学校が「自走」するためのサポートとして、ICTに詳しい行政の担当者とその指導実践に優れた指導主事、さらに民間企業等の力を活用し、つねに最適なハード整備や、活用方法の支援ができるようにしています。
学校単独、教育委員会単独でよい取り組みをしていても、理論と実践を融合し、共有できる力がなければ、せっかくのよいデータやさまざまな経験の蓄積が広がっていきません。教師と児童生徒の間はもちろん、教師と教育委員会の間にも信頼関係を築くことが重要なのです。
世界に目を向けると日本のICT教育は後塵を拝しており、緒に就いたばかりだと思います。しかし、「後の者が先になる」という教えもあるように、日本のICT教育は大きなポテンシャルを秘めていると信じています。Society5.0が実現する未来の教室では、さまざまなICT機器が文具のように用いられ、AIを活用して教室が科学されていると確信しています。これからも、まずは自分が社会に開かれた存在となり、ワクワク感を持って教育に向き合っていくことが重要なのではないでしょうか。
(注記のない写真は今井康一撮影)
制作:東洋経済education × ICTコンテンツチーム
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