「フォートナイト」がアップルに反旗を翻す理由 急成長のアプリ内課金市場で何が起きているか

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Epic GamesとFortniteの状況が特殊なのは、Fortniteが前例がないほどフリートゥプレイが機能し、世界中のプレーヤーから愛されている優等生であることだ。

アプリ内課金のゲームといえば、プレイを有利に進めるためアイテムを買わせたり、“ガチャ”とも呼ばれるくじ引きを有料で行わせて強力なアイテムを出すといった手法で収益を上げることを想像しているかもしれない。ネットワークゲームで、他プレーヤーに勝つために多額の課金をするという構図は珍しくないからだ。

しかしFortniteは課金で自らを強化できない。できるのは、自分の分身であるキャラクターを“カッコよく見せる”ことだけだ。ゲームプレイそのものは徹底して無料だ。この課金スタイルは近年いくつかのゲームで見られるが、最も成功した事例がFortniteで、それにより3億5000万の登録者を獲得したわけだ。

同時に重課金を行わなくとも純粋にプレーヤースキルで勝負できる仕組みでビジネスを成立させていることも高く評価されている。

この人気、つまりゲームを遊びたいプレーヤーが集まる環境を活用し、Epic GamesはEpic Games Store(EGS)という独自のプラットフォームを強化してきた。EGSではFortniteだけではなく他社製を含めていくつものゲームが配信されてるが、手数料は12%と業界標準の半分以下に設定している。

この数字が一貫して手数料の高さを訴えてきたEpic Gamesにとっての適正価格ということなのだろう。

“ゲームユーザーの民主運動”にならない理由

ネットワークゲームはプレーヤーを集めるコミュニティーが大きいほど楽しみも大きくなる。巨大なプラットフォームほど顧客獲得のコストは下がるため、支配的なプラットフォーマーが提示するルールを守らねばゲーム事業は成り立たない。

電子的に配信するだけでその売り上げの3割を持っていかれることに辟易していることを隠してこなかったEpic Gamesは、Fortniteというメガヒット作でプレーヤーの支持と収益基盤を得たことで、兼ねてからの主張をここで大きく展開する機会と見たのだろう。

ヒットゲームを作るためのリスクを下げ、新しい開発者たちの参入を促すためにも、参入リスクを下げたいという意図が垣間見える。しかし、これを民主化運動のようにはやしたてるEpic Gamesの主張には矛盾も多い。

App StoreやGoogle Playを通じたアプリ配信の契約では、一貫してデジタルコンテンツの販売を行う場合、各ストアのアプリ内課金システムを使うことを求めている。例外はない。アプリ内課金を使うアプリの多くは無料で配信されており、配信システムの運営コストはプラットフォーマー(今回の場合はアップルとグーグル)が負っている。

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