三菱自、ゴーン改革の拡大路線で背負った代償 欧州縮小で東南アジアに「一極集中」の賭け

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一方、欧州と同程度の赤字を出している北米については大胆なリストラ策を打ち出さなかった。固定費の抑制を進めれば採算ラインまで引き上げることが可能だと三菱自は説明する。

だが、三菱自がラインナップに並べるSUVは北米で競争が最も激しい車種セグメントだ。明確な成長戦略を見出せていない中、固定費削減ばかりで収益改善を実現しようとするシナリオは困難だと言わざるをえない。東海東京調査センターの杉浦氏も「北米になぜ手をつけないのか理解できない。撤退によるディーラーからの訴訟リスクなど、何らか理由があるのかもしれない」と指摘する。

PHV技術に社運かけるが・・・

技術面ではプラグインハイブリッド車(PHV)に社運をかける。PHVを環境対応車の主軸に据える考えで、新型車を今年度から相次いで投入する計画だ。

ただ、PHVの販売拡大には課題も多い。世界のPHV販売は56万台(2019年、国際エネルギー機関調べ)と、現状の市場はそれほど大きくない。

加えて、国内で販売するSUVの「アウトランダーPHEV」は主力グレードで車両価格400万円台からと、決して安くはない。東南アジア各国の所得水準を考慮すると、販売台数の拡大には疑問符も付く。トヨタ自動車など競合大手もPHVを開発・投入しており、先行者利益は小さくなっている。

しかも、PHV技術の成否は、日産、ルノーと組む3社アライアンス内での立ち位置にも影響を与えかねない。今年5月に公表された3社アライアンスの中期計画では、特定の領域で強みを持つ1社が「リーダー」として、3社全体の技術や車両の開発を主導する枠組みを導入。三菱自はPHVのリーダーの役割を担うことになった。

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三菱自も競合他社と同様、CASEと呼ばれる次世代技術への投資負担が年々増加。2019年度の研究開発費は2016年度比47%増の1309億円にまで膨らんだ。しかし、トヨタやフォルクスワーゲン(VW)など業界のトップランナーが1兆円を超える開発費を投入する中で、販売台数が10分の1程度の三菱自が単独で次世代技術の開発を幅広く続けることは難しい。

そのため、自動運転や電気自動車(EV)、コネクティッドなど主要な次世代技術の開発には一定の見切りをつけ、日産とルノーに大きく依存せざるをえないのが現実だ。3社アライアンスは、“建前上”は対等かつ「ウィンウィン(双方に利益がある)」の精神を原則とする。そこで、三菱自がPHV技術での競争力を確保し、アライアンスに対して目に見える形での貢献をしていかなければ、事業規模が小さい三菱自はアライアンス内での存在意義が問われかねない。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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