教育データ標準化、スタディログの活用と分析に向けて

サイバー空間と現実空間が高次に融合する“Society5.0時代”*の到来を前提に構想されたGIGAスクール。「1人1台端末」の導入と学校での高速通信ネットワーク構築をはじめとしたハード面の整備は、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、その動きが加速している。

GIGAスクール構想が掲げる、子どもたち一人ひとりに最適化され、創造性を育む学びを実現するためには、ソフト、人材、新たなルールづくりが欠かせない。教育データを活用する意義についても、さまざまな視点から説明できる。

例えば、時間と距離の制約を取り払い、教育の平準化につながるオンライン教育は、海外との連携授業も視野に入ってくるだろう。個別最適で効果的に学びを支援していくためには、子どもたち一人ひとりの状況を把握し、学習、知識・技能の定着を助ける個別最適化(AI)ドリルの活用なども想定される。

あるいは、プロジェクト型学習を通じた創造性の育成、文系・理系の壁を取り払うことも狙うSTEAM教育の拡充などを進めていくために、教育データ活用の効果が期待できるだろう。一方、学校における事務の効率化、教員の経験知を可視化して共有する仕組みを構築する際にも、大きな役割を果たすはずだ。

いわば、新しい学びを実現していくためには「教育データの利活用」が1つのカギを握っているともいえるだろう。

実際、教育データを利活用する3つのイメージが提示されている。まず学習の記録をデジタルで記録することによって児童生徒自らが振り返り学習に活用する学習のサポート。次に、学校や教員については、個別最適な学習指導・生徒指導を実現する指導改善。そして、最後が、匿名加工して蓄積された教育ビッグデータを大学や研究機関が分析することによって教授法や学習法などの新たな知見を創出、政策へ反映していくという目的だ。

第1回有識者会議では、まず、学習指導要領のコード化が議論された。GIGAスクール構想の加速によって、「1人1台端末」が整備されることで、学習履歴をデジタルで蓄積できる環境が整う。一方、デジタル教科書やデジタル教材、博物館アーカイブのコンテンツに学習指導要領コードを付与することで、関連資料を一覧で表示することができる。例えば、デジタル教科書で織田信長のページをクリックすると、関連するデジタル教材やデジタル問題集、博物館デジタルアーカイブそれぞれの該当箇所を表示することが可能になる。

デジタル教科書やデジタル教材、博物館をはじめとする外部コンテンツの活用を促し、社会の多様な力を教育現場で活用していくためにも学習指導要領コード化の重要性は理解できる。

デジタル教科書は2024年度の本格導入が議論されている

一方、デジタル教科書についても、デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議での議論が始まっている。デジタル教科書の発行状況を見ると、小学校の教科書では94%(2020年度)、中学校の教科書では95%(2021年度)に達している。また、GIGAスクール構想が示される前の2019年10月に調査した市町村立小学校の学習者用デジタル教科書導入状況を見ると、19年度に1校でも導入したのは107市町村で全体の6.1%。20年度に1校でも導入することを検討していると回答したのは257市町村で14.7%となっている。

今後、「デジタル教科書が児童生徒の学びの充実に寄与するために、どのような学習機能や操作機能、学習履歴の把握のための仕組みが必要か」「各教科等の授業時数の2分の1に満たないこと」という学習者用デジタル教科書を使用する際の基準をどう考えるか、そして、デジタル教科書とデジタル教材の連携などについて、会議で議論される。

教育のICT化の流れは止まることはないだろう。教育現場の変化が加速している中、教育ビッグデータの利活用やデジタル教科書について、引き続き議論の動向を追っていく必要がありそうだ。(写真:iStock)

*Society5.0とは、サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、 経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。狩猟、農耕、工業、情報を経て、新たな社会として示されている。IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなどの先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、格差なく、多様なニーズにきめ細かに対応したモノやサービスを提供するとしている。