台湾の超天才「唐鳳」が語るデジタル教育の本懐 39歳デジタル大臣「自ら動機を探すことが重要」

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「台湾を代表するプログラマー」であり、IQ180以上の「天才」と称され、台湾だけではなく日本でも熱い注目を浴びている人物がいる。台湾で「デジタル大臣」を務める唐鳳(とう・ほう、Audrey Tang)氏(39歳)だ。
2016年10月に蔡英文政権のもと、台湾史上最年少の35歳という若さでデジタル担当大臣として行政院に入閣するや、社会問題の解決や政策の実行にデジタル技術を果敢に発揮し、今回のコロナ禍で台湾に導入された「マスク在庫管理アプリ」によっても、あらためてその名が知れ渡った。
日本でも教育へのICT導入が喫緊の課題となっている中、今回、緊急取材を実施。デジタルがこれからの教育に与える可能性をはじめ、自身が受けてきた教育など、前後編に渡ってロングインタビューをお届けする。

デジタルが教育に与える可能性と、その未来

――新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大に対し、台湾の取り組みが世界で高く評価されています。教育現場においては、日本では休校措置がとられ、入学式など通常の予定を進められないうえに、休校中の授業をどう進めればいいのかといった混乱も生じました。台湾では学校教育など、どのように進められましたか。

唐鳳:台湾では新学期の開始を2週間遅らせ、すべての学校でマスクや非接触型の体温計、アルコール消毒液、せっけんなどの基本的な衛生用品がそろっているかを確認することから始めました。したがって、今年の夏休みも2週間遅れで始まることになりました。

最大の変化といえば、新型コロナ対策として大規模な集会を行わないなど、いわゆる「密」を避けたということ。また、対面型のディスカッションを行う授業においては、オンライン型の学習を応用する機会が増えました。これは、マスクを着けていると相手の表情がわからないためです。

ただ、台湾では世界で見られたロックダウンや、日本で行われた緊急事態宣言は実行されませんでした。そのため、遠隔授業とはいっても子どもが家にいて、学校とつながるという形ではなく、小規模のクラスやグループに分かれ、それぞれ異なる場所から、衛星のように大きな教室空間につながっているような状況をイメージされるとよいでしょう。例えば、オンラインで行っている今回のインタビューでも、台湾側に私とカメラマンの2人がいて、日本側に記者と通訳を含めて4人います。こんな形のオンライン授業が、台湾ではよく行われています。

総合的には、新型コロナによる影響を受けた程度は、他国よりも小さかったと思います。ビデオ関連のテクノロジーが発達したので、不鮮明な画質や、途中で音声が途切れるといった5年前や10年前にはよく悩まされた問題もなくなりました。パソコンを開いて接続すれば、お互いがはっきりと見えることは、もはや普通ですからね。

インタビューは、台湾行政院にある唐鳳氏の執務室と、日本をデジタルで結んで行われた

――デジタル技術やオンラインを活用して教育を支援するということは、日本でもつねに言われていることです。ところが、実際の現場では、どのように導入して、どのように活用すればよいのかという点で、先生たちも子どもたちも試行錯誤をしています。教育現場のデジタル化のために、その具体的な方法や方向性をどう考えていけばよいでしょうか。

唐鳳:「デジタル化」ということが指す内容は、実にさまざまなものがあります。例えば、ビデオチャットや2つの教室を合併させる「ダブルルーム」、1人の先生が担任する教室にいて、専門課程の先生がほかの教室やスタジオといった離れた場所にいて授業を行う「ダブルティーチャー」といったやり方は、いずれも空間という制約を取り除くために行われるものです。別の空間にいても、同じ時間を共有していますね。

私がデジタル大臣に任命される前のことですが、台湾のテレビ局からインタビューを受けました。当時、私はフランスにいたのですが、インタビューはVR(バーチャルリアリティー)のスタジオで行われました。

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