新型肺炎が「世界の自動車産業」に及ぼすリスク 多く拠点を構える部品メーカーに与える懸念

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自動車部品世界1位のボッシュ(独)は中国で59の生産・販売・研究開発拠点を設け、中国の売上高は当社全体の約2割を占めている。2019年には無錫で世界初となる48V電池生産、南京で電動ブレーキブースター(iBooster)の生産を開始し、中国に限らず日本を含むアジア市場に製品を供給している。

電源電圧48ボルトを用いたマイルドハイブリッドシステムは安価で燃費改善ができる技術であり、ハイブリッド車やEVに搭載するiBoosterは、エネルギーを回収することにより、EVの航続距離の増加、緊急ブレーキの自動的に実行などの性能を持っている。

武漢では2つ工場があり、ステアリングシステムやサーモテクノロジー関連製品を生産している。新型肺炎による部品供給の寸断が当社のグローバル生産に甚大な影響を与える可能性があり、中国への依存度が高いボッシュにとっては、手痛い打撃となりそうだ。

数多くのメーカーが中国に集まる

自動車用サンルーフの世界大手ベバスト(独)は中国で11の生産拠点を設け、地場・外資系自動車メーカーに供給している。同社の武漢工場は、世界最大の自動車ルーフ生産拠点であり、生産能力が当社の中国全体の半分を占めている。現在ベバストには本社を含むすでに感染者7名が出たと発表した。

一汽VWの6工場のうち、5工場が操業開始した(筆者撮影)

アメリカのタイヤ大手、グッドイヤーは中国でタイヤ1600万本の年産能力を擁し、トヨタ、フォード、BMW、アウディなど日米欧自動車メーカーに供給している。2月7日には上海の統括本部や大連の生産・開発拠点を閉鎖した。

湖北省で3工場を設けているMAHLE(独)は、エンジンバルブ、オイルフィルター、冷却システムなどを生産しているほか、Faurecia(仏)は武漢で2工場を展開しており、シートシステムや内装部品を生産している。

またHoneywell(米、ターボチャージャー生産)、BorgWarner(米、駆動モータ生産)、Brose(独、シート生産)、Valleo(仏、LEDランプ生産)などの大手部品メーカーが武漢で生産拠点を抱え、武漢以外の地域に部品を供給している。今やこうしたメーカーの生産再開が見通せない情況だ。

現在、中国では地域ごとに有力な自動車グループが立地しており、自動車部品を生産する工業パークが100カ所以上あり、地方政府も自動車部品メーカーの誘致に力を入れている。外資系部品メーカーを中心とするミドル・ハイエンド製品や機械・設備の生産、地場メーカーを中心とするローエンド汎用部品や部材の生産が、中国自動車部品産業の拡大に大きな役割を果たしたのである。

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