海外市場で拡大目指す、「日本の時代劇」の挑戦 海外「コスチュームドラマ」人気に乗れるか
そもそも番組の売り買いが行われるMIPCOMの日本の出展ブースに時代劇作品が並ぶことは珍しい。目玉になっているのは、NHK「大河ドラマ」シリーズぐらいだ。
新作が少ないという理由も大きいが、この状況について杉田社長は、「時代劇を海外に売るという発想そのものが日本のテレビ局にはない。海外展開を考えるうえでエアーポケットになっているのではないか。今回の藤沢周平作品をはじめ、池波正太郎作品などは海外でも十分に共感してもらえる内容。さらに『帰郷』主演の仲代達矢のインパクトの強さも助けになった」と述べた。
フランスでは、『仲代達矢特集』と題して出演作品を上映する映画館があるほか、ポスターを見るだけで、映画ファンの多くが、名優・仲代達矢の存在に気がつくという。今回、仲代達矢本人のカンヌ来場はかなわなかったものの、役者陣を代表して常盤貴子、佐藤二朗が現地に足を運び、精力的にプロモーション活動も行っていた。
表現方法やストーリーへの評価高いが広がりに欠く
海外バイヤーやプロデューサーの反応も気になるところだ。カンヌの会場で上映中、涙を拭いながら視聴していた男性に話しかけると、スペインを拠点に活動するドラマのプロデューサーだった。
「ラストで繰り広げられた2人(仲代達矢と中村敦夫)の決闘シーンはとくに見応えがあった。全体的に詩的な表現が印象的で思わず涙があふれた。世界の視聴者にも共感を得ることができるストーリーではないか」と高く評価する言葉が聞けた。
日本のコンテンツはアニメに至ってもそうであるように、表現方法やストーリーが見る者に深く刺さり、世界でも一定の層から支持される傾向は高い。
だが、広がりに欠ける点は否めない。今回カンヌの上映会場をみても満員御礼とは言えない客入りの状態だった。『帰郷』の上映会場の4倍もの座席数にもかかわらず、満席にする作品もあり、日本の時代劇に興味を持つ海外バイヤーは正直少ないというのが正直なところだ。
そんな現実を目の当たりにしながらも、日本市場だけをみていては時代劇復活への活路は見いだしにくい。時代劇専門チャンネルの視聴世帯数は805万世帯(2018年11月末日時点)と、日本の有料放送チャンネルの中ではトップ水準だが、視聴者層はシニアが中心。今後の存続と成長を考えると、若年層や海外市場を見据えるタイミングとしては遅いぐらいかもしれない。
エンターテインメント化が進む今どきの時代劇が並ぶなかで、日本の時代劇が今から入り込むには難しさも伴うが、攻め方次第で可能性はある。かつて、黒澤明監督の『七人の侍』や『羅生門』といった時代劇作品が海外で高く評価された実績もある。
乱立するメディア環境のなかで乗じて攻勢をかける結果の先に、復活できるか否かの答えがみえてくるのではないか。
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