海外市場で拡大目指す、「日本の時代劇」の挑戦 海外「コスチュームドラマ」人気に乗れるか

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イギリスBBCも新作に時代劇シリーズを積極的に投入し、『女王ヴィクトリア 愛に生きる』などが世界ヒットを飛ばしている。若年層を取り込むNetflixにも歴史・時代劇のカテゴリーに並ぶ作品が豊富にそろっている。

フランス・カンヌで昨年10月に開かれた、世界最大のテレビ見本市「MIPCOM2019」の会場でも、注目トレンドとして時代劇をフォーカスしたセッションが組まれていた。

そのなかで、「なぜ人気?」と、そもそもの人気の理由についてがテーマに上った。登壇者の1人、欧州の有料チャンネル「VIASAT WORLD」のヴァイスプレジデントKarin Heijink氏は「視聴者ニーズ」を要因に挙げ、「5年ぐらい前までは定義づけが狭かったが、時代劇にも新たなオルタナティブ作品を求める声が視聴者から次第に集まり、それに応えた新作が増えていった。その中からヒット作が生まれている」と答えていた。

またこのほか、時代設定が古代であろうが中世であろうが「現代的な強い女性像」を描いていることも支持されている理由に上った。その結果、視聴者のターゲット層は現代ドラマと変わらず、若年層からシニア層まで男女共に幅広く取り込み、時代劇ファンを増やしている。

海外では新機軸の時代劇が新たなファンを獲得

実はこのカンヌのセッションの登壇者の1人に、日本の「時代劇専門チャンネル」を運営する日本映画放送の杉田成道社長も並んでいた。

MIPCOM2019の公式ワールドプレミア上映作品にアジアで唯一、同チャンネルのオリジナル時代劇第20弾の作品『帰郷』が選ばれ、国際コンテンツ市場の場で日本の時代劇がフォーカスされたからだ。

MIPCOM2019で開かれたセッション「コスチューム・ドラマ・カンファレンス」の様子。右端が日本映画放送の杉田成道社長 (筆者撮影)

杉田社長は『帰郷』の監督・脚本も務めた立場から、藤沢周平作品を原作に「自然と人々の共存」や「人間の死生観」を見つめた普遍的なテーマであることや、売りの1つである8K制作作品としての見どころを語りながら、「日本の時代劇をまずは知ってもらおう」とそんな心意気も垣間見えた。

日本で初めてMIPCOM2019公式ワールドプレミア上映作品に選出されるに至った背景を杉田社長に直接尋ねると、次のような答えが聞けた。

「新聞社や出版社なども入り、20社を数えるパートナーが集まり、時代劇を今後、どのように展開していくべきか。そんな想いから作られた作品になる。パートナーの1社であるカンテレから声をかけてもらったことをきっかけに、訪れることができた。海外展開については入り口の段階にすぎないが、思った以上に注目してもらった。日本の時代劇にはまだまだ可能性が広がっていると実感している」

『帰郷』は、いわゆる製作委員会方式で制作されている。日本市場では2月8日の時代劇専門チャンネルでのテレビ初放送を前に、1月17日から全国の劇場で期間限定上映を行うなど、放送以外の展開も実施している。海外については、MIPCOM2019での上映を皮切りにセールス活動を開始している。

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