「深夜急行」は1日1本、京阪電車の種別の秘密 準急よりも遅い区間急行も存在する

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一般的な鉄道利用者は準急より急行が格上である認識が強いと思う。しかし、京阪の「区間急行」は、準急よりも格下の立場で、準急の通過駅にも律儀に停車する。平日朝の下り列車を見ると枚方市発7時31分の準急は淀屋橋着7時56分で所要時間は25分。一方、枚方市発7時33分発の区間急行は、淀屋橋着が8時11分で所要時間は38分。両者の差は13分もある。

さらに、区間急行という名前にもかかわらず複々線区間の緩行線側を走行し、途中「通勤準急」に追い抜かれるという、どこか屈辱的な場面もある。いっそ「区間準急」という名前でもいいのではないかとも思うが、40年近くこの「区間急行」という名前で沿線に浸透している。

そのほかにも、京阪の優等列車種別・愛称は紆余曲折の歴史がある。かつての京阪といえば、京橋―七条間のノンストップ運行が名物であったが、2000年の中書島・丹波橋、2003年の樟葉・枚方市の特急駅格上げをしたことで、その印象も年々薄れていった。この頃から京阪の種別については迷走を始めるのだが、同年に「K特急」、さらに交野線直通のK特急「おりひめ」「ひこぼし」、2008年の中之島線開業による快速急行の登場と、さまざまな試行錯誤が繰り返されてきた。

近年はもともと限定的な運行であった「快速特急・洛楽」の定期運行により、かつての「ノンストップ特急」を彷彿とさせるような停車形態をとった。ただし、一度特急停車駅へ格上げした駅を再び格下げすることは沿線住民から非難囂々であるから、その上をゆく種別を作り上げ、「種別のインフレ」状態となったのだ。結果的に現在の京阪特急系種別は「ライナー」「快速特急・洛楽」「特急」など収拾のつかない事態になっている。

「鳩マーク」の伝統

そんな京阪にも、譲れない美学がある。私鉄特急の中ではただ急行よりも停車駅が少ないだけのものも少なくないが、京阪における特急とは、伝統の「鳩マーク」の冠のもと他種別とは一線を画した存在となっている。古くは「テレビカー」や「ダブルデッカー」、近年では「コンフォートサルーン」などの存在を見てわかるとおり、運賃のみで利用できる特別なサービスというのは京阪の歴史に色濃く残る。

ただし2017年の「プレミアムカー」導入に際し、京阪も特急有料化に踏み切った。ただし全面的に有料化しわけではなく、プレミアムカーの6号車以外とライナーを除いて特急料金が不要である。その乗り心地は、料金がかからないことが信じられないほどのハイレベルであり、京阪の特急へのこだわりを強く感じる。

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