あの4Kテレビが「暗い」というとんでもない衝撃 輝度が十分足りない製品が多数出荷されている

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3つの主な要因は重なり合えば、より4Kの「暗さ」をクローズアップさせかねないが、最も深刻なのは最大輝度不足の問題だろう。

②の2Kカメラの撮影による問題は4K放送が今後普及し、4Kカメラでたくさんの番組が作られるようになれば、解決するはずの問題だ。

③の2Kテレビとの比較の問題は、①と②が解決すれば、自動的に解消されると言える。

ところが、①の最大輝度不足の問題の解決は、そう簡単ではない。「暗く見える」4Kテレビはすでに市場に大量に出荷されている可能性があり、テレビメーカーが個別の苦情にまじめに対応するとなれば、テレビパネルそのものを入れ替えるなどの大規模工事が必要になるかもしれない。そんなことになれば、その4Kテレビが「性能不足」であることを自ら認めることになり、社会問題に発展しかねない。

すべては顧客の反応次第

すべては顧客の反応次第だ。そのため、メーカーはそうした顧客には、①の輝度の説明はせず、②の放送局の番組の問題とすることで、苦情に対応しようとしているケースがある。これは顧客への誠実な対応といえるだろうか。

筆者は8月、この取材結果を朝日新聞デジタルおよび朝日新聞紙上で特集・連載記事にした(「検証 4K放送は暗いのか」など)。すると、「うちの4Kテレビも暗い」などという反響が読者から多く寄せられた。

国内で4Kテレビを販売する大手電機メーカー5社および4K放送を担当するBS放送局4社に取材したところ、大半の社が視聴者などから「4K放送が暗く見える」との苦情を受けていたのに、視聴者に対して、「暗さ」の原因をきちんと説明していない。そもそも輝度を非公表にしているメーカーが大半では、原因調査すら前に進まないだろう。

これでは4Kの華麗な宣伝に乗せられて4Kテレビを買った視聴者が、置き去りにされてしまいかねない。映像の良しあしは個人の感性によって違うこともあるかもしれないが、「4K放送視聴予備軍」がまだ数百万人以上いる限り、業界にはこの問題へのより正確で丁寧な説明責任が求められるはずだ。

松田 史朗 朝日新聞 記者

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まつだ しろう / Shirou Matsuda

1964年生まれ。業界紙記者、『週刊ポスト』『週刊文春』の特派契約記者、フリーライターを経て朝日新聞社に入社。政治部や社会部、特別報道チームなどを経て、2017年4月から経済部。著書に『息子が、なぜ』(文藝春秋、構成まとめ)、『田中真紀子研究』(幻冬舎)、共著に『ルポ 老人地獄』(文春新書)などがある。

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