大阪「なにわ筋線」、ついに始動した大事業 総事業費3300億円、関空―新大阪間が便利に

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現在、関空―新大阪間は大阪メトロ御堂筋線との乗り換えが必要な南海経由は、所要時間60分から乗り換えなしの50分となる。「はるか」も経路の距離が短くなるので2分短縮の49分と想定する。

大阪(梅田)と関空間の場合、今のJRは関空快速利用が前提となるので64分を要するが、これが北梅田からの「はるか」利用で44分となり、20分の短縮効果がある。南海ルートも地下鉄から乗り継いで54分が乗り換えなしの45分となる。同様に新幹線へのアプローチも、南海本線・高野線沿線を中心に10分以上縮まるエリアが面的に広がるとアピールされている。

都市交通としては、著しい混雑を呈する大阪メトロ御堂筋線のラッシュ時の混雑率が約17%緩和されると想定される。大阪都心部の人の流れは梅田・本町・心斎橋・難波を抱える南北方向が主流だが、にもかかわらず、地下鉄中央線―近鉄けいはんな線、JR東西線、そして新しい近鉄―阪神なんば線 3本の大きな直通路線を持つ東西方向に対して、地下鉄堺筋線―阪急京都線を除き長距離の相互乗り入れ路線がない。ゆえに真ん中を貫く御堂筋線だけに人が集中し、他の隣接地下鉄路線は段違いに利用が少ないという構造上の問題を抱えている。そこに梅田と難波を経由して広域輸送のターミナルや郊外とも直結する路線の誕生には期するところが大きい。

一方、「はるか」や「くろしお」、関空快速が抜ける大阪環状線では本来の環状線電車を走らせることで通過駅の不便を解消できるとともに、USJ 方面への増便や新大阪方面からの直通など輸送体系が広がる可能性もある。

うめきた開発で地下化される梅田貨物線

大阪中心部の南北の幹線道路は「筋」と呼ばれる。最も有名かつ中心を貫通する御堂筋から西へ2本、四つ橋筋に次いで並んでいる街路が「なにわ筋」だ。大阪環状線福島駅の北側から南下して芦原橋駅付近を通り、西成区に至る。なにわ筋線はその北半分を利用する路線として計画された。

特急電車を退避した後に吹田に向け出発する貨物列車(撮影:久保田 敦)

現在まで地下鉄も通っておらず、在阪の人以外はなじみが薄いと思うのでその街路を歩こうと思うが、同線を語る前提として、梅田貨物線に触れる必要がある。

「梅田貨物線」とは通称で、正しくは東海道本線の貨物支線の1つであり、吹田を起点に大阪駅北側に広がっていた梅田貨物駅に出入りする路線であった。線路はさらに大阪環状線西九条駅につながり、桜島線安治川口駅までの貨物ルートを形成している。JR西日本はこれを使って1988年になら・シルクロード博の臨時列車を新大阪―奈良間に直通運行、これが旅客線活用の契機となり、翌1989年から「くろしお」系統の一部を新幹線接続のため新大阪・京都発着として同線経由とした。1994年に関空特急「はるか」も走り始めた。だが、その出自から、大阪駅の端をかすめて交差しつつもそこに旅客ホームを持っていない。

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