大阪「なにわ筋線」、ついに始動した大事業 総事業費3300億円、関空―新大阪間が便利に

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2019年7月10日に国土交通大臣から鉄道事業許可状が交付された「なにわ筋線」は、梅田貨物線に新設される北梅田駅とJR難波および南海電鉄南海本線新今宮を結ぶ。

「キタ」と呼ばれる大阪駅・梅田界隈と「ミナミ」と呼ばれる難波を串刺しにして、大阪都心部を縦貫する都市鉄道であり、既存のJR線や南海線と接続、直通運転を行うことにより鉄道ネットワークの強化、関西国際空港や新幹線新大阪駅へのアクセス改善・高速化、関空―新大阪間の軸の形成、沿線の拠点開発促進、さらに広域の大阪府内南北の交流促進、京都・神戸・奈良への観光地アクセス改善、ひいては関西の都市間競争力・国際競争力の強化等の意義が見いだされ、具体的な検討が行われた。

途中に中之島、西本町、南海新難波の3駅が設けられる(既存駅以外の駅名は北梅田を含めていずれも仮称)。このうち北梅田―西本町間はJR西日本と南海の共同営業区間とされ、西本町―JR難波間はJR西日本、西本町―新今宮間は南海電鉄それぞれの営業区間となる。JR東西線と同じ上下分離方式が採られ、整備主体の関西高速鉄道㈱が施設を保有し、JR西日本と南海は線路使用料を払って運行する。

総事業費は3300億円

JR東西線を保有してきた関西高速鉄道は、これまで大阪府、大阪市、JR西日本、兵庫県、尼崎市と複数の民間企業が出資する第三セクター会社であり、なにわ筋線整備に際して南海電鉄が加わった。

新大阪駅を発車する関西空港行き「はるか」(撮影:久保田 敦)

なお、JR東西線となにわ筋線の会計は完全に分離され、なにわ筋線事業には大阪府・市が各165億円、JR西日本が145億円、南海電鉄が185億円を出資することとなる。

建設延長約7.2km、南海本線に接続させる部分以外の約6.4kmは地下線で、全線複線。総事業費は約3300億円と予定され、1日約24万人の利用を見込む。開業は2030年度末、すなわち2031年春を予定する。

鉄道ネットワークの整備効果として第1に挙げるのは広域鉄道網の拡充で、日本の玄関の1つ、関西国際空港と国土軸たる新幹線へのアクセスの改善。現在、JRの「はるか」(梅田貨物線経由)は両駅間をダイ㆑クトに結んでいるが、南海「ラピート」も加わることで2ルートが確保される。

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