ソニーと「宿敵」の提携つないだ「日本人」の素顔 マイクロソフトのクラウド事業トップが語る
昨年11月にマイクロソフトのナデラCEOが来日した際には、吉田社長の就任後初めての対面が実現した。続いて翌12月には沼本氏がソニーの社内イベントに招かれ来日。マイクロソフト自身の変遷について講演し、デジタル変革における学びを共有した。
そうしたさまざまな関わりの中で、「こういうことができたら面白いですね、と互いに話しながら、提携検討の話が立ち上がっていった。さらにCEOサミットで両社のトップが会うということにもなり、覚書の締結を目指して私が当社側の窓口となって調整した」と沼本氏は説明する。こうして両社は急接近していった。
ソニー側がマイクロソフトを選んだ理由には、アジュール上にゲーム開発のシステムが充実してきたこともありそうだ。マイクロソフトは昨年、アジュール上で提供する中核機能に、ゲーム開発者向けサービスを加える戦略を発表。開発者が求めるプログラミングツールやゲームエンジンのほか、リリース後の運用やユーザー分析、オンライン対戦の仕組みなど、さまざまなサービスを備えている。
「Xbox+クラウド」のノウハウが認められた
アジュール事業のビジネス責任者であるジュリア・ホワイト氏は、「30年の間、われわれはXboxでゲームのノウハウを培ってきた。より複雑で規模の大きなマルチプレーヤーゲームが増えるにつれ、クラウドの必要性は高まっている。ソニーはこうした点を評価してくれた」と説明する。沼本氏も、「ゲームインフラとしての優位性は、ほかのクラウドプラットフォームはかなわない」と自信を見せる。
とはいえ、Xboxの最大の“敵”に塩を送ることにならないのか。沼本氏はそうした見方を一蹴する。「そもそもマイクロソフトのミッションは、あらゆる組織がより多くのことを達成できるようにすること。競合であっても技術で貢献するのがわれわれのスタンスだ」。
さらに沼本氏は、「ゲーム業界はデジタル変革の波にさらされている。もはやコンソール(ゲーム機)同士の戦いはない。市場の裾野を広げるために協業できる可能性を双方が見いだすのはすごく自然なことだ」と語る。
今回の提携は、クラウドゲームにとどまらない。ソニーが開発・製造するイメージセンサー(画像処理半導体)と、マイクロソフトがアジュール上で提供するAI(人工知能)機能を連携させ、新たな半導体開発を進める方針だ。これも沼本氏とソニーとの会話から立ち上がったものだという。
提携発表の翌週には、ソニーやニコンなどが参加するスマートカメラの業界団体が、クラウド基盤としてアジュールを採用すると発表。マイクロソフトは着々と顧客基盤を広げる。
マイクロソフトのようなクラウドサービス企業は、世界中におけるデータセンターやネットワークの設備投資に年間1兆円を超える巨費を投じている。これはソニー全体の設備投資額のおよそ倍で、同社が一からインフラを構築するのは容易ではない。提携はソニーにとっても渡りに船だったといえる。
ソニーグループの株価・業績 は「四季報オンライン」で
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら