派遣切りが浮き彫りにした労働者使い捨ての企業論理《特集・雇用壊滅》
批判を受けたいすゞは解雇予定日の2日前、期間工の解雇を撤回。代わりに合意解約を求めた。2日後の予定日までに解約に応じたら、契約満了日までの労働日給与の85%を支給、満期慰労金も積み増すというのが提示された条件。応じなければ休業を命じて、休業補償の6割のみ支払うとした。三浦さんは「これは解雇撤回ではない。積み増しをチラつかせて辞めろと言っているのと同じことだ」と批判する。
さらに不利な立場に置かれているのが、派遣工だ。いすゞは今もって雇用関係がないとして派遣工の処遇を組合との団交の交渉事項とすることを拒んでいる。派遣工は当初方針と変わりなく、昨年末で何の補償もなく職場を追われている。
昨年6月から藤沢工場で派遣工として働き始めた男性(43)は11月19日、派遣会社の社員から呼び出された。ボールペンを渡されて、「みんな解雇だから、これにサインして」と告げられ、契約解除の通知書を渡された。「派遣工には期間工の満期金もない。自分のことより、若い世代を使い捨てにする、こんなシステムが許せない」と語る。
足掛け6年、藤沢工場で働いた派遣工の佐藤良則さん(49)も「長く働けばいつかは正社員にと期待していたのに」と悔しさをにじませる。派遣会社の高木工業との団体交渉で、12月末での解雇は撤回され、寮も1月中は住めることになった。だが、「有給消化の1月分の給与は手取り15万円。心もとないがこれを元手に部屋を探すしかない」と語る。
派遣工がより不利な立場であるのは他社でも同様だ。1月27日、三菱ふそうトラック・バスは昨年末で解雇予定だった契約途中の期間工28人を契約期間満了まで雇用継続すると公表した。だが派遣工約440人について行った契約の中途解除に関しては何ら変更していない。
厚労省は昨年末、昨年10月から今年の3月までに職を失う非正規労働者は8・5万人に上ると発表した。そのうち派遣労働者が7割弱を占め、その半分が中途解除だ。対して期間工の契約期間途中での解雇は1割強にすぎない。
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客観的事実を一つひとつ積み上げると、04年の製造ラインへの労働者派遣の解禁は、ユーザーにとって期間工よりもさらに使い勝手のよい雇用の調整弁を作り出しただけだったように見える。そのうえ、派遣会社も雇用主としての責任を放棄するなら、すべてのツケは派遣労働者に回される。
昨年11月18日、製造派遣のアウトソーシングから自動車部品の曙ブレーキ工業に派遣された派遣工が集められ、口頭で12月20日付での解雇が宣告された。その2日後、出勤した派遣工に対して派遣会社社員が封筒を手渡した。中には「解雇予告通知書」と一緒に「解雇承諾書」が同封されていた。
「実際の解雇時に権利主張させぬよう一筆を要求したのだろう」と、解雇承諾書を受け取った派遣工(39)は憤る。派遣会社は「解雇承諾書は任意で取得しており強制ではない」と主張する。だが、7月に入社した彼のもとに、健康保険証が交付されたのは、解雇予告された翌日。「出入りが激しいからすぐには手続きをしなかった」と遅れた理由を告げられたが、そうした扱いにも派遣工に対する軽視が見て取れる。。