「ガラクタ置き場」が変身、鉄道高架下の新提案 東京メトロ綾瀬駅、短期間でオープン

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むすべやメトロ綾瀬が驚異的なのは、オープンまでのスピードの速さ。そもそも、レンタルスペースの運営を提案したのは、綾瀬に本店を構える不動産会社のハウスプラザだった。レンタルスペースの第一人者でスペースマーケット代表の重松大輔氏の考え方に刺激を受けて、錦糸町の自社ビルの最上階にレンタルスペース「むすべや錦糸町」をつくったことがきっかけだ。

同じビルの1階・2階に入居している同社の不動産ショップにやってくる客は、月に5人から10人。結婚や入学や転勤といった引っ越しを伴うライフイベントでもなければ、不動産ショップに足を運ぶ人はまずいない。それに対してレンタルスペースには月1000人がやってきた。客との接点の多さは、不動産会社とは桁違い。客との接点が増えれば、さまざまなビジネスチャンスの誕生を期待できる。

「むすびやメトロ綾瀬」の報道公開の様子(写真:ハウスプラザ)

ハウスプラザがこのような確信を持ったのが昨年の8月。それがきっかけで、「レンタルスペースを使えば、最近、空き店舗が目立ってきた綾瀬を元気する手伝いができるかもしれない」と考えるようになり、ガード下に空き店舗を持つ東京メトロに注目した。そこで、東京メトロの社員研修で講師などを務めていたスペースマーケットの重松氏に「東京メトロに紹介してほしい」と頼んだ。その8カ月後には、開店にこぎつけたのだ。

この間、東京メトロはスペースマーケットに出資までしている。「当社が出資した理由は、レンタルスペースが中期計画で挑戦すると決めていた3つのテーマの1つ『つながりの創出』にぴったりのビジネスだったからです」と話すのは、東京メトロ経営企画本部の池沢聡氏。これほどの速さで出資を決めたのは異例だという。言い替えれば、つながりの創出は、それほど緊急を要する案件なのかもしれない。

加えて、レンタルスペースは、老人ホームや保育園のような許認可は不要であり、地域から反対されることもない。店舗を確保したらすぐに営業を開始できることがビジネスとしての強みである。同店にはオープンわずか1週間で、5組の客が利用したそうだ。

むすべやメトロ綾瀬のスピード感に比べると、多くの商店街の取り組みは、いかにものんびりしたものに見える。

地域の個性が反映される

現在、レンタルスペースという業態は「やっと認知度が上がってきた」という段階で、施設数はまだまだ足りない。東京メトロは西葛西駅などの高架下、あるいは東京メトロが所有している自社ビルなどで展開していく予定だ。また、ハウスプラザはJRや私鉄各線にもレンタルスペースを広げていきたいという。チャンスにあふれた市場でもあるわけだ。

レンタルスペースは住民が主体的にコミュニティーを作る場である。いろいろな沿線にレンタルスペースが誕生すれば、沿線、あるいは駅ごとの個性を反映したユニークなコミュニティーが誕生するはずだ。そうしたコミュニティーが、それぞれ個性的な方法で地元商店街に活気を呼び戻してくれる時代がやってくることを期待したい。

竹内 三保子 カデナクリエイト

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たけうち みほこ / Mihoko Takeuchi

明治学院大学経済学部卒業後、西武百貨店入社。紳士服飾部、特別顧客チームを経てフリーライターに。その後、編集プロダクション・カデナクリエイトを設立。流通業で培った顧客視点で執筆を行っている。共著に『図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書』『クイズ 商売脳の鍛え方』など。最新著に『課長・部長のための労務管理 問題解決の基本』(カデナクリエイト著・マイナビ出版)。

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