日本の教育機関初、上智がタイに会社設立 「東南アジアのハブ」バンコクで事業を開始
「東南アジアのハブ」と称され、グローバル企業の駐在所が多数集まるタイの首都・バンコク。この都市は今、産業界のみならず教育界にとっても重要な戦略地になっている。ここ数年、バンコクに海外拠点を置く日本の大学が急増しているのだ。その中でも、一歩先を行く上智大学は、会社法人を設立して東南アジアでのプレゼンスを高めようとしている。
日本の教育機関としては初
上智大学を運営する上智学院は、今年4月、バンコクに教育・研修支援事業を展開する「Sophia Global Education and Discovery Co., Ltd.」(以下、Sophia GED)を設立した。事業会社を海外に設立し、代表権を持つ最大出資者として事業を展開するのは日本の教育機関としては初の試みだ。
同社の代表取締役を務める上智大学グローバル教育センターの廣里恭史教授は、バンコクに拠点を持つことの狙いを次のように語る。
「バンコクは、東南アジア諸国やインドなどの周辺国をつなぐ地政学的な優位性があります。また、上智大学では現在、国際機関との包括的な連携協定の締結を進めており、その点においても、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)や、国連教育科学文化機関(UNESCO)をはじめとする国際機関の集積地であるバンコクは、戦略的に重要な地であるといえます。さらに、タイにおける高等教育市場の発展性や将来性が際立っていることや、日本語学習者層の厚さも大きな要素です」(廣里教授)
近年、上智大学ではタイをはじめ東南アジア諸国での活動展開に注力してきた。2013年には、「大学の世界展開力強化事業(ASEAN国際学生移動プログラム:AIMS)」が文部科学省に採択され、これにより上智大学から東南アジア地域に留学する学生や、現地からの留学生の受け入れが飛躍的に増えた。
その活動を推し進めるため、2015年に設置されたのがASEANハブセンターだ。同センターは、日本への留学生のリクルート活動、スタディツアーや現地での国際会議、シンポジウムの開催補助、教育機関や国際機関と協定を結ぶにあたっての連絡調整等の役割を果たしてきた。
そして、このハブセンターを会社法人化したのが、Sophia GEDというわけだ。法人化に踏み切った理由はいくつかあるが、その中でも主な理由は予算と法的基盤の確保だ。2014年、上智大学は文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業にも採択され、さまざまな取り組みを推し進めてきたが、同事業は2023年度末に終了する。東南アジアにこれまで以上にコミットしたい同大としては、それら基盤の確保が課題となっていた。