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「上智×ANA×海外大」の連携講義がスゴい 2週間の講義で学生の将来が変わることも

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  • 上智大学 制作:東洋経済企画広告制作チーム
ディスカッションはもちろん英語。担当教員は「学生の負担は大きいが、得られる経験もそれだけ大きい」と話す

グローバル人材の育成は、あらためて言うまでもなく日本全体における喫緊の課題だが、課題と認識していながらなかなか動き出すのが難しい事柄でもある。そんな中、日本経済団体連合会(以下、経団連)、アジアを代表する名門校の香港中文大学と連携し、これまでにない形の人材育成プログラムを立ち上げたのが、上智大学。国・地域を超え、組織の枠組みを超えた「体験型特別講義」に迫った。

英語で議論してアウトプットを出す

「Japan's population will continue to decrease, affecting GDP, so it is important to reliably attract inbound foreign tourists and pass on the benefits to regional and local economies――(今後、人口減少によるGDPへの影響が懸念される中で、日本はインバウンドの観光客を確実に誘致し、地方経済に還元していくことが重要なのです)」

細かなリサーチデータを盛り込んだパワーポイントを使い、流暢な英語で訴えかける日本と香港の学生たち。今年8月、上智大学が経団連、香港中文大学と共同で開講した連携講義の最終プレゼンテーションの一場面である。

網倉久永 教授
1990年一橋大学商学研究科博士課程修了。ペンシルベニア大学ウォートン・スクール客員研究員、カルロ・カッタネオ大学客員教授などを歴任。組織変化と競争優位の持続性や、技術革新による産業構造変化などをテーマに研究している

上智大学が経団連との連携講義をスタートさせたのは、2012年のこと。経団連加盟企業の社員を講師に招き、「グローバルビジネスの現状と課題」「グローバルビジネスのフロンティア」という二つの講座を開講している。

17年には、グローバルな学びの連携を模索していた香港中文大学が加わり、既存の講座とは別に、新たに3者でのプログラム開発という流れが生まれた。それが今回の連携講義だ。

学生たちは香港で1週間、東京で1週間の計2週間に及ぶ講義やフィールドワークを通して、グローバル企業の経営課題解決に挑戦するという、さらに濃密な学びの場となっている。

この取り組みにおける主導的な役割を果たしてきた上智大学経済学部経営学科の網倉久永教授は「グローバル人材育成を、大学と産業界が連携して行っていくモデルケースとなるだろう」と胸を張る。

日本の大学、海外の大学、そして経団連の3者が連携し、ここまでつくり込んだプログラムは珍しいからだ。学生たちからの問い合わせはもちろん、参加を希望する企業も多いという。

この講義が学生に与える影響について網倉教授はこう語る。

「就職活動以外で学生が“働く大人”と接する機会は、実は非常に少ない。“働く大人”から直接話を聞いたり、問題への解決策を一緒に考えたり、あるいは食事をしながら仕事への情熱や難しさを教えてもらうことは、学生にとってキャリアを考える何よりの機会になります。また、国籍や文化の異なる人とチームを組み、英語で議論をしてアウトプットを出すというスキルは、今後のグローバル化が進む社会では不可欠です。この講義は、学生たちがその縮図を体感できる貴重な機会なのです」

言い換えれば、社会の厳しさを経験しつつ、グローバルビジネスの現場で求められる素養を体験的に学べる貴重な2週間となる。

ANAによる「インバウンド誘致」という課題

では、具体的に学生たちはどのような課題に取り組むのか。

今年は、ANAグループ(以下、ANA)が全面的に協力。学生たちに与えられたのは、「インバウンドの観光客を日本に誘致する策を考え、また地元経済に生かしていくにはどうすべきか」という時事を如実に反映した課題だった。

プログラムの最初の1週間は、香港が舞台となる。初日に3チームの両大混成メンバーと課題が発表され、グループワークがスタート。ANA香港支店の担当者をはじめ、香港中文大学教員、カンタス航空のアジア地域責任者やマカオ観光局担当者による事業戦略などの講義や、現地の観光名所の実地調査を通じて、学びを深めていく。

ANAの機体工場で、同社社員の説明を熱心に聞き入る学生たち。 この後、運行管理センターなどを見学した

その後、日本のお盆休みを挟み、今度は東京での1週間。上智大学経済学部のアダム・ジョンズ准教授が地域ブランディングに関する講義を行ったほか、羽田空港内にあるANA機体工場やANAの事務所がある羽田空港第2旅客ターミナルを見学した。実体験で多くの学びを得た学生たちは、さらにグループワークにも力が入り、教員やANA社員のアドバイスを受けながら各チーム独自の資料を集めていった。

そして最終日、3チームはANA、経団連、教授陣、過去の参加者などを前に発表の場を迎えた。

ターゲット層の嗜好や傾向、日本のインバウンド誘致のエリア選定やコストなど、きちんとしたリサーチデータに基づいた解説、そして学生独自の視点からの提言に、講評者側もメモを取りつつ熱心に聞き入り、質問も多く出された。

「新しい視点や鋭い指摘がされ、とても良いプレゼンテーションだった」と最後に網倉教授からの講評を受け、緊張していた学生たちの表情も和らぐ。この後、学生たちは、出された質問への回答を盛り込んだ最終レポートを作成し、各大学で評価され、単位認定されることになる。

ANA社員、経団連職員など、”働く大人”がずらりと居並ぶ中で、英語で堂々とプレゼンテーション

学生の未来が変わる可能性

今回参加した上智大学の3年生男子学生は、プレゼンでは流暢な英語を披露していたが、香港中文大学の学生との議論においては苦労したと語る。

「お互いに第一言語ではない英語で(香港中文大学の学生は中国本土からの留学生も多かった)、しかも異なる文化を前提にやりとりするには、必ず言葉の定義や話の方向性を確認して進めていく必要がありました。コミュニケーションすることは難しいことなんだと初めて感じました」

そして、昨年この講義に参加し、すでに就職活動を終えている4年生男子学生のコメントが、この講義の意義を示唆している。

「香港の学生は頭の回転が早く、世界を見る視点も日本の学生とは違っていました。海外の同年代のレベルは想像以上に高いとショックを受けましたが、将来はこういう人たちと一緒に仕事をしていくのだと実感しました」

この男子学生にとってさらに決定的だったのが、香港で聞いた投資家の言葉だった。「会社はお金を稼ぐ場ではなく、自分を成長させてくれる場として選ぶべきだ」という言葉に感銘を受け、それまでの志望先を変更したという。結果として、その後の就職活動で「納得できる結果が得られました」と話してくれた。

2週間の真剣議論を経て、学生同士の仲もグッと縮まる。 最終プレゼンテーションの後の打ち上げは、大変に盛り上がったという

デジタル化が著しく進んだ現代では、世界中の現場で起きていることをリアルタイムで見聞きしたり、最先端の理論を学んだりすることはそれほど難しくない。その一方で、学生がグローバルな場で主体的に議論に参加し、自らと異なる視点や考えを受け入れるような体験をし、その結果、気づきを得るという場は非常に限られている。

その意味で、上智大学×経団連×香港中文大学の連携講義は、学生たちの未来を変えてしまうほど強烈であり、グローバル人材への第一歩としては十分すぎるほどの体験を提供しているようだ。