事務総長ら国連幹部が上智大学を訪れる理由 キャンパスでも年2回「国連Weeks」を開催

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以前から国際色豊かな大学として知られてきた上智大学だが、近年、その動きをさらに加速させている。同大が強く意識しているのが、国際社会に圧倒的な影響力を持つ国連との結びつきだ。

年2回開催の上智大学「国連Weeks」

「上智大学には『他者のために、他者とともに』という教育精神があり、これは、世界の平和を守り、人権を擁護し、秩序ある世界をつくるという国連の理念と合致します。国連との結びつきのもと、今後ますます変化していくグローバル社会に適応し、『他者のために生きる社会づくり』に貢献する人材を育成したいです」

そう意気込むのは、上智大学の「国際協力人材育成センター」所長を務める植木安弘教授。同教授は長年にわたり国連で働き、2014年4月に上智大学に着任するや、すぐさま「上智大学国連Weeks」というイベントを立ち上げた。現在では上智大学にとって欠かせない重要行事として春、秋の年2回開催されているが、本来、国連ウィークとは、国連設立の日である10月24日を含む週のこと。それが春に開催されるようになったのには、理由があった。

「ちょうど私が本学に着任する時期に、国連広報局が中東和平国際メディアセミナーの開催場所を探していました。国連の正式な会議を一大学が手がけるのは世界では前例がありませんでしたが、本学がホストしたことが『国連Weeks』の始まりです。その後、本来の国連ウィークがある10月にも開催するようになり、年2回の開催が定着しました」(植木教授)

2018年の国連weeksの様子。(写真上)毎回人気のキャリア・セッションでは現職の国際機関の職員が仕事の魅力を熱く語る。(写真下)UNHCRのセッションでは、日本における難民認定をテーマに議論が展開された 

今年6月3日~20日には11回目となる『国連Weeks』が開催予定で、数々のイベントが用意されている。その1つが、歌手のMISIA氏を中心としたアフリカの教育と開発支援についてのシンポジウム。今夏に日本で開催予定の第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の名誉大使も務めるMISIA氏は、自らもケニアを訪れ、継続的に教育支援や貧困・マラリア撲滅の活動に従事。シンポジウムではMISIA氏が肌で感じたアフリカの現状についての講演が予定されている。

また、元国連事務次長補の丹羽敏之氏が自身のキャリアや国連機関での経験について講演するほか、将来、国際機関を目指す人に向けたキャリア・セッションも行われる。

「国際協力人材育成センターでは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) 駐日事務所をはじめ、教育連携を行っている国連関係機関の現役職員や、国際協力分野で活躍する有識者をアドバイザリーネットワークとして組織化しています。国連Weeksでは、このネットワークを中心に、国際機関で活躍する方々を迎えてワークショップを開催します。ロールモデルとなる人物から直接アドバイスを得ることで、自身に必要なスキルを把握し、国際機関への道をひらくことにつながるでしょう」(植木教授)

受講者から国際機関の職員を輩出

上智大学
国際協力人材育成センター所長
植木安弘教授

国連Weeksのみならず、国際協力人材育成センターでは、グローバル人材育成のために、さまざまな活動を展開している。

「国際機関で働くには、大学院で修士号を取得しておくことや、一度社会に出て特定の分野での専門性を高めておくことが有利に働きます。一方で、JPO派遣制度※1の対象年齢が35歳以下、また、国連事務局の若手職員を採用するYPP試験※2の対象年齢が32歳以下であることからもわかるように、20代後半から30代前半がもっとも応募しやすい時期といえますが、いずれの試験もかなりの倍率となっています。そのため、上智大学では、社会人にも国際機関でのキャリアを志す人を広く対象にした講座を開講しています」(植木教授)

※1 JPO:ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー派遣制度。外務省を通じて国際機関に2 年間派遣される制度。国際機関に勤務しながら、正規職員を目指す

※2 YPP:ヤング・プロフェッショナル・プログラム。試験に合格すると、2年の期限付き契約がオファーされ、職員候補者の待機リストに登録される

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連載「叡智が世界をつなぐ」