日本の教育機関初、上智がタイに会社設立 「東南アジアのハブ」バンコクで事業を開始
「AIMSプログラムの推進などによって、東南アジア地域との双方学生交流の機会は増え続けています。その流れがスーパーグローバル大学創成支援事業終了と同時に切れてしまうのは避けたい。ただ、限られた予算と運営体制の範囲内で維持される一拠点のままでは、事業活動を機動的かつタイムリーに展開することができません。そのため、補助金予算終了後も持続可能な運営方法を検討した結果、会社法人化し、その事業収益で活動を展開していくのがベストだという結論に達したのです」(廣里教授)
Sophia GEDの資本金のうち、上智学院が49%を出資し、タイ側は投資会社など3社が各17%を出資、合わせて51%。会社法人化によって予算的、法的に基盤を確保し、新たな教育・研究と人的交流の柱を構築したいと廣里教授は語る。
コンテスト優勝者は上智大学に1年留学
同社が目指すのは、魅力ある先駆的な教育・研修プログラムの構築だ。代表的なものを紹介しよう。
今年度の春休みからは、国連機関やアジア開発銀行と世界銀行の事務所もあるバンコク、およびフィールドワークを含むメコン地域での「国際機関実地研修」が開講予定。また、カトリック信者が多い北部タイに暮らす少数山岳民族の社会的課題について考える「北部タイ・サービス・ラーニング・プログラム」など、カトリック・イエズス会の設立母体を持つ上智大学ならではのプログラムも予定されている。
「上智大学は、チェンマイで日本語スピーチコンテストに参画しており、優勝者を本学に1年間の留学に招くという取り組みを行っていますが、北部タイの学生にとって、このようなチャンスがあることが日本語学習のモチベーションになっているとの声を聞いています。本学が現地との交流を通してつくりあげてきたネットワークを生かし、ASEAN全体を大きなキャンパスにしていきたい」(廣里教授)
教育・研修プログラムの対象は、上智大学に限らず、上智学院が運営する短大や中等教育校のほか、他の教育機関、企業や自治体まで広げる。例えば、社会人に対しては「ASEANの今を巡るエグゼクティブ・ツアー」と題し、経済特区や企業訪問、インフラ視察等を通してASEANの経済社会についての理解を深め、ビジネスの契機を探ることを目的にしたツアーを2021年度から実施する予定だ。
「Sophia GEDは、本学職員の研修拠点としても活用したいと考えています。また、将来的には学生を対象としたインターンシッププログラムを作る構想もあります。教職協働という言葉がありますが、学生も巻き込み、”教職学協働”の活動を展開していきたい」(廣里教授)