パワハラが多い会社に「未来はない」単純な理由 「愚痴の多い飲み会」ばかりの会社は黄色信号

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「自己実現」という言葉があります。一流企業と呼ばれる会社に入ったり、仕事で成果を上げることが自己実現だと思っている人もいますが、それは確かに「社会的な自己実現」ではあっても、心理学的に見れば、自己実現そのものではないのです。この微妙なズレがボディブローのようにその人の人生に効き始めるということです。

心理的な意味での「自己実現」の定義は簡単です。それは「自分の能力を出し切る」ということです。自分の持っている力、自分の発想を出し切っていくことさえできれば、結果がどうあれ、自己肯定感は高まります。

しかし、上下関係が固定化した環境にいると、自分の能力を出し切ることができません。その結果、(それなりに成果を出しているにもかかわらず)どんどん自己評価は低下していかざるをえないのです。

実際、自己評価が低くて悩んでいる方の中には、少なからず、高学歴で、世間で一流といわれる企業にお勤めの方が少なくありません。それは結局、縦の関係性の中で、自分で判断する機会を奪われたことによる、自己評価の低下なのです。

「愚痴の多い飲み会」は黄色信号

最近、勤めていた会社を辞めた知人の女性から、こんなことを聞きました。辞めてから数カ月して、元の会社の社員が集まる飲み会に誘われたので参加してみたところ、ヘトヘトになったのだと言うのです。なぜかというと、飲み会に参加した2時間の間、みんなが、その場にいない上司や同僚の愚痴ばかりを言っていたからだとのことでした。

何より興味深いことには、彼女がよくよく思い起こしてみると、その会社の飲み会はいつもそんなふうだったけれど、辞めるまではそんなことが気になったことは一度もなかった、というところでした。辞めてはじめて、会社の飲み会が「愚痴合戦」だったことに気がついた、というのです。

パワハラの本体は、会社の文化にあります。ですから、その職場の「パワハラ危険度」を測りたければ、その会社の「飲み会」に出るのが、一番の早道です。なぜなら、飲み会でその場にいない上司の愚痴をみんなが口にする職場は、それだけ、社内の上下関係が固定化している、抑圧的な職場だと考えられるからです。

上下関係が固定化している組織にいる人は、皆一様に、自己評価が低く、表情が暗くなって、心身の調子を崩している人も少なくありません。そうした職場は、パワハラの危険性が高いことはもちろん、働く人の能力を引き出す力も弱い職場だと判断して、間違いないでしょう。

もちろん、会社というのは組織なので、「上下関係」をゼロにしてしまうことは不可能です。大切なことは、その上下関係に、何かの「風穴」を開ける、ということだと私は思います。

では、どういう形で固定化した上下関係に風穴を開ければいいのか? そのあたりはまた、項を改めて、考えてみたいと思います。

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アルファポリスビジネス編集部

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