パワハラが多い会社に「未来はない」単純な理由 「愚痴の多い飲み会」ばかりの会社は黄色信号

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固定化した上下関係の最大の問題は、あまりにもその関係性が当たり前になりすぎて、他の関係性がありうる、ということが頭からすっぽり抜け落ちてしまうことにあります。実は、こうした「無意識化・固定化した上下関係」が、今、日本社会の停滞を引き起こす、隠れた要因となっているように私は感じています。

「パワハラ以上の問題」が起きるリスクも

「無意識化・固定化した上下関係」がもたらす問題は、ただパワハラの温床になっているというだけではありません。より根本的な問題は、その組織の中にいる人すべての「能力」を損なってしまうことにあります。

なぜ、固定化した上下関係が、人の能力を奪うのか。それは、上下関係が無意識化・固定化した職場においては、「自分より上の人の言うことに対して従順に従う」ということが、もっとも合理的な振る舞いとなるからです。

「逆らわずに従う」ということは、言い換えれば「自分で考えない」ということです。これでは、その人の能力が抑圧されるのは当然のことです。そして、部下が自由に発想し、発言しない「イエスマン」だらけの職場では、当然、上司の能力も発揮されなくなります。

あの電車の中でのあまりにも日常的な会話から、「クリエイティブな何か」が生まれる可能性を、私個人はほとんど感じ取ることはできませんでした。

あの場面でのあの会話の中では、上司は自分の話が否定されるなんて微塵も予測していないし、部下は部下で、上司に言ってもいいことと、言ってはいけないことの境界線ばかりを意識している。これでは、新しい発想が生まれる道理がありません。

こういう話をすると、少々私の言葉が過ぎているようにも思います。また、こういう指摘をすることはよくないのではないかという気持ちもあります。しかしながら、そういう観点をあえて掘り返して検討していかなければ、日本社会における人間の能力を阻む見えない壁をあぶり出すことはできないのではないかと思っています。

自分の頭で考えず、ただ従ってばかりいると、人間の能力は必ず劣化していきます。そして、さらに恐ろしいのは、「自分の頭で考えずに人の言うことに従う」という行動様式を繰り返していくと、だんだんと「自分は無能だ」という自己認知が強化されていくことです。つまり、自分の頭で考えないことで、人の自己肯定感は低下するのです。

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