タリバンの復活 火薬庫化するアフガニスタン 進藤雄介著 ~アフガニスタン情勢で傾聴に値する情報
オバマ大統領下、日米関係の最重要課題はアフガニスタン問題になるのでないか。オバマ大統領はイラクからの段階的撤退を主張する一方、アフガニスタンでの戦いを強化し、米軍を増強する旨述べている。また、異例の留任となったゲーツ国防長官もアフガニスタンへの増派を宣言している。
この問題が日本へも影響するのは、オバマ大統領は安全保障問題で同盟国との協調を強調してきているからである。NATO諸国には当然として、日本に対しても自衛隊の派遣を強く求めてくるであろう。したがって、日本の安全保障問題を考える時、アフガニスタン情勢を把握することが不可欠にもかかわらず、日本には、今日のアフガニスタンの軍事政治状況を記した本がほとんどない。
本書はソ連撤退後、いかなる経緯を経て、タリバンが政権を獲得するに至ったか、タリバンの統治形態はいかなるものか、タリバンと隣国パキスタン関係はどうなっているかなど、アフガニスタンの政治・軍事情勢を判断する上で必要な情報を網羅的に記述している。
この本はオバマ政権下の日米関係に関心を持つ者にとり必読書であろう。「米国に対し宣戦布告をしたアルカイダと世直し運動として集まったタリバンを同じテロ組織と見なすのは無理がある」「軍事行動だけではタリバンなどの反政府勢力を押さえることは出来ない」「タリバンの復活にはパシュトゥン人-人口の42%で最大勢力-の復活という側面がある」「タリバン内でアルカイダとは考えを異にするグループとの和解の可能性を検討する価値がある」などの指摘は、日本が対アフガニスタン政策を構築するにあたり、傾聴に値する。健全な外務省職員が存在することを世に示している。
しんどう・ゆうすけ
外務省大臣官房考査・政策評価官。1964年生まれ。東京大学経済学部卒業、外務省入省。在サウジアラビア大使館二等書記官、地球規模問題課首席事務官、在ドイツ大使館一等書記官、通常兵器室長、福井県警察本部警務部長、国際情報官(安全保障、国際テロ等担当)などを経る。
花伝社 2310円 281ページ
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