収益力では新日石と互角、銅の需要は石油より堅調だ--高萩光紀・新日鉱ホールディングス社長

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--銅鉱山開発は中長期的に依然有望だと見ているのですか。

世界的に見ても銅の需要は石油以上に堅調に推移するでしょう。銅は社会インフラづくりのベースとなる金属。新興国の発電所、住宅建設などの需要が今後も出てくるはずです。足元の相場は低迷していますが、こうした状態が5年も10年も続くとなれば、世界経済の危機的状況も変わらないということになります。

ただ、銅の需要は石油に比べると好不況に敏感です。石油は不況でも寒くなれば灯油を焚(た)く家庭は増えるが、銅は景気後退の打撃が大きい。半面、景気が回復に転じた途端、需要は急増する傾向もあります。

鉱山開発は今から一生懸命やっても、生産が始まるのは12年の終わりから13年ごろ。現在の価格が低迷しているからといって、開発にブレーキがかかってしまうと結論づけるのも本来、おかしな話です。

--金属の中流に当たる銅精錬や、下流のIT関連製品・素材事業などの先行きは。

「中流」では一定の利益しか上がらないのを覚悟しています。今は銅鉱石が余剰ぎみで精錬マージンは当社に有利な状況ですが、いつまでも続くことはない。需要回復で価格が反転すれば再び、資源メジャー側が優勢になるのは間違いないところ。金属は上流と下流が中心です。

チタン事業も極めて厳しいのが現状。航空機メーカーの資材調達が遅れており、納期が当初予定から1年ないし2年もずれ込んでいます。

しかし、全世界ではエアバスとボーイング両社の航空機の受注残が7000~8000機と高水準です。今後開発される航空機は省エネ型が中心で、チタンなど軽くて丈夫な素材への需要が膨らみそうです。

ポリシリコン事業も顧客側から「早く作れ」と催促されています。当初の想定を上回る規模で生産を開始することになるでしょう。

--石油事業の上流についてのイメージはいかがですか。

生産量は両社合計で日量15万バレル程度に増えることになります。上流から下流までの一貫体制が出来上がると考えていいでしょう。

石油化学事業でもジャパンエナジーのパラキシレンの生産能力が年間約100万トン。新日石は同160万トンで計260万トンに達し、統合新会社は世界2位の芳香族プラントを有する一大勢力になります。

--原油価格の適正な水準はどのくらいと考えていますか。

1バレル=60~70ドル程度が妥当と見ています。開発コストの上昇、代替エネルギーとの競争力、一般の消費者がさほど抵抗感なく購入できる、などの要素を勘案すれば、現在の価格は下がりすぎでしょう。

気になるのはある日突然、供給能力不足が生じて価格が急騰するリスクです。09年は原油や銅など資源価格が一年を通して軟調に推移しそうです。それを受けて開発も止まるかもしれない。ところが、値段が安いままだと新興国需要が急激に膨らみ、マーケットにファンドなどの資金が流入して、相場を押し上げてしまうシナリオは大いに考えられます。

--新会社はコスト削減に聖域を設けないということですが、名門のバスケットボールチームや新日石の野球チームの扱いは。

スポーツチームの存廃が話し合いの俎上に載ったことはない。10兆円の売り上げの会社ができるのですから、経営がよほどおかしくならないかぎりは続けていくでしょう。

たかはぎ・みつのり
1940年神奈川県生まれ。64年一橋大学法学部卒業、旧日本鉱業入社。94年ジャパンエナジー取締役。98年常務。99年取締役・常務執行役員。2001年取締役・専務執行役員。02年社長。06年から現職。

(撮影:尾形文繁)

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