セブン店主ら、「労働者」ではない判断に落胆 人手不足が直撃、曲がり角のビジネスモデル

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オーナー側の代理人である宮里邦雄弁護士は15日に記者会見し、「中央労働委員会は労働委員会全体としての命令を下すので、一歩踏み出すことに躊躇したと思う。現状を変えることがフランチャイズ本部に与える影響について、勇気を持って判断し得なかったという印象だ」と話す。コンビニ加盟店ユニオンの酒井孝典執行委員長も「この命令は到底納得できるものではない。今まで以上にわれわれの話を聞いてもらえなくなるのではないか」と落胆の表情を見せる。

記者会見で苦渋の表情を見せるコンビニ加盟店ユニオンの酒井孝典執行委員長(中央左)ら(記者撮影)

労働組合法上の労働者と言えるかどうかは、「オーナーらが本部の事業組織に組み入れられているか」や「オーナーへの報酬が労務供給の対価ないしはそれに類似するものとみることができるか」などによって判断される。中労委の命令では、加盟者はそうした判断の枠組みに照らして、労働者にあたらないと判断された。

今後、ユニオン側は中労委の命令取り消しを求め、5月のゴールデンウィーク明けにも東京地方裁判所に提訴する方針だ。コンビニ本部側はこれまで、オーナーらの個別の相談には応じても、団体での交渉は受け付けてこなかった。仮に裁判でもオーナー側の主張が認められなかった場合、コンビニ本部とオーナーは事業者同士として交渉することになり、オーナーの弱い立場は残り続ける。

20年前比で人件費は1.4倍に増えた

オーナーらが挙げるコンビニ経営の課題の1つは、本部との利益配分方法だ。本部と加盟店は売上高から商品原価を引いた粗利益を一定の割合で分け合う。加盟店は、その配分の中から従業員らの人件費をまかなう。人件費などの費用が増加すると、加盟店が受け取る利益が圧迫される。セブンーイレブンを運営するあるオーナーは「20年前と比べて人件費は1.4倍に増えた」とため息をつく。

これまでは人件費が増えても売り上げの伸びでカバーしてきたが、2011年~2012年ごろから平均日販(1店舗ごとの1日あたり平均売上高)は頭打ち状態にある。人手不足のなか、コンビニ従業員の確保も難しくなっており、人件費負担が加盟店経営の重しとなっている。2018年11月末時点で、全店での平均日販はローソンが前年同期比1.8%減の53万4000円、ファミリーマートは同0.5%減の52万9000円、業界首位のセブンーイレブンはわずかに同0.4%増の66万2000円だった。

人手不足を理由に24時間営業は続行不可能だとして、営業時間を午前6時から午前1時までとする、大阪府東大阪市のような店舗も現れた。このように本部の指示に反するような動きが出た場合、これまではオーナー側が違約金を支払うか、違約金なしで閉店するかを迫られるケースが多かった。しかし、東大阪市のように本部に公然と反旗を飜すようなケースが表面化するなど、潮目はこれまでとは明らかに変化しつつある。

今回の決定を受け、セブン本部側は「これまで以上に一店舗一店舗の加盟店オーナーとのコミュニケーションを密にし、店舗運営上の問題について協力して解決を図っていきたい」とコメントした。一方、西日本でセブン-イレブンを運営するある加盟店オーナーは「本部側は1店舗で例外を認めたら他の店舗からも要望が来るのをとても恐れている。これまであまりにもビジネスモデルが上手くいきすぎていたので、本部側は仕組みを変えたときのリスクが想像できない」と話す。

1974年にセブンーイレブンの1号店が出店して以来、右肩上がりの成長を続けてきたコンビニ業界。それがいま、ビジネスモデルの大きな曲がり角を迎えている。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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