近鉄「夢洲―奈良」直通特急、実現は難しくない 集電方式の違いなど技術的な課題を徹底検証

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

よく知られている第3軌条方式の例として、東京メトロ丸ノ内線が挙げられる。丸ノ内線の車両には、台車にコレクターシューが設置されており、第3軌条から集電している。

東京メトロ丸ノ内線2000系のコレクターシュー。台車に取り付けて左右に張り出させ、第3軌条から集電する(筆者撮影)

つまり近鉄奈良線と近鉄けいはんな線を直通させる第1関門は、架空電車線方式と第3軌条方式に両対応させるため、パンタグラフとコレクターシューの両方を搭載することと、直流1500V/750V2種類の電圧に対応させた複電圧車が必要だということになる。実はどちらも実例があり、理屈の上では障害はない。 

ロンドンとパリを結んだ「ユーロスター」車両も2007年までは第3軌条方式のイギリス在来線に乗り入れていたため、コレクターシューがあった(2003年、筆者撮影)

パンタグラフとコレクターシューを両方とも兼ね備えた電車はイギリスの高速鉄道に存在する。ロンドンとパリやブリュッセルを結ぶ高速鉄道「ユーロスター」などである。

イギリスでは高速鉄道区間が架空電車線方式なのに対して、在来線は第3軌条方式である。ユーロスターは2007年までは在来線に乗り入れていた。そのため、第3軌条方式にも対応するためのコレクターシューが搭載されていた。

ちなみに日本の新幹線と異なり海外の高速鉄道は郊外部分に線路を敷設して、都市部は在来線に乗り入れるスタイルとしている路線も多い。

日本でも2方式に対応した例がある

それどころか、かつては日本でも実例があった。1911年に電化された信越本線横川―軽井沢間のいわゆる碓氷峠区間は、トンネル断面の小さな本線を第3軌条方式とし、駅構内は安全性を重視して架空電車線方式を採用し、碓氷峠を越える電気機関車はパンタグラフまたはポールとコレクターシューを備えていた。このスタイルは架空電車線方式の新線に変更され、EF63形が登場する1961年まで続いた。

アプト式時代に碓氷峠で活躍した電気機関車はパンタグラフとコレクターシューを備えている。保存機もあるので今でも見ることができる(筆者撮影)

複電圧仕様車も前例があり、直流1500V/750V両対応の複電圧仕様車は箱根登山鉄道に現存する。
 直流1500V/750Vの両方の区間で同等の性能を持たせるには、電気機器を低い電圧の仕様に合わせるのが最も手軽だ。しかも現在主流のVVVFインバータ制御では、入力した直流1500Vを750Vで出力させることができるので、特別な電気回路も必要ない。

次ページ問題点は何もないのか?
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事