「究極の仮眠室」で鉄道の安全性は向上するか ブレーキ判断からおつりの計算まで効果大?

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戸建て住宅メーカー、早稲田ハウスが開発した「究極の寝室体験カー」(筆者撮影)

「究極の寝室体験カー」を開発した直接のきっかけは、15人の死者を出した2016年に軽井沢で起きたバスの事故。運転士が大型バスの運転が不慣れだったことなどが原因として挙げられているが、同社ではこの事故を契機に、質が高い睡眠は運転を職業とする人にこそ必要だと考えたという。つまり、「究極の寝室体験カー」はバス会社や電鉄会社、タクシー会社、運輸会社などに対して、安全運転のためには、質の高い睡眠を確保できる仮眠室などを用意すべきだというデモンストレーションすることを目的に造られたわけだ。

もっとも、住宅メーカーがこうした運輸のプロに運転士のことをとやかく言っても相手にされないだろう。まずは、運転を職業とする人に、質の高い眠りが質の高い仕事に結び付くことを証明してもらうことが必要だ。そこで白羽の矢が立ったのが、早稲田ハウスの社長の金光容徳氏と付き合いが長い銚子電鉄だった。

ぬれ煎餅の売り上げが頼みの綱

銚子電鉄の営業距離はわずか6.4km。10駅を19分かけて走るローカル鉄道だ。開業は1923年なので、100年近い歴史をもっていることになる。

銚子電鉄は「あきらめない経営」で知られる(写真:銚子電鉄)

鉄道ファンの間では「あきらめない経営」で知られている。何をあきらめないのかというと、倒産しそうになってもあきらめないのだ。同社もほかのローカル鉄道会社と同様、赤字経営が続いているのだが、それは鉄道経営だけを見た時の話。儲からなければ、ほかの事業で儲ければいいし、それでもだめなら、正直にお客さんに窮状を話して助けを求める。

2006年には現金残高が200万円まで減少し、倒産が目の前に迫った。この時は副業で作っていた1枚82円(当時、現在は86円)のぬれ煎餅を従業員が売りまくり、鉄道ファンがそれを購入することで、なんとか持ち直すことができた。この話は「奇跡のぬれ煎餅」として今でも語り草だ。

もっとも今でも鉄道事業は儲からない。現在、同社の売り上げは5億円。その中で運賃収入はわずか1億円にすぎない。残りの4億円は「ぬれ煎餅」「まずい棒」「ラーメン」をはじめとした食品が占めている。

さらに2015年からはネーミングライツと呼ばれる駅名の販売もスタートした。ひと駅1年当たりの契約料は180万円だ。この時に協力したのが早稲田ハウスだ。

両社の関係は2014年にさかのぼる。銚子電気鉄道株式会社の取締役経営戦略担当の黒澤崇氏は「早稲田ハウスさんが配っていた『ありがとうシール』を使わせてほしいと頼んだことからお付き合いが始まりました」と話す。

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