200万円以下でMTもある車に惹かれるワケ ジムニー、N-VAN、スイフトスポーツの魅力

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ただしN-VANは、N-BOXを単純に商用車へ改造したクルマではない。N-VANは左側のピラー(柱)をドアに内蔵させ、前後ともに開くと開口幅が1580mmに達する。「タント」の左側も同様のつくりだが、開口幅は1490mmだからN-VANが上まわる。そしてN-BOXにはこのような機能がない。

さらにN-VANは、助手席も後席と同じくコンパクトに畳める。したがって1人で乗るときは、ドライバーの周囲をすべてフラットな荷室に変更できる。

本来ならば、エンジンを荷室の下に搭載して十分な荷室長を確保する「アクティバン」をフルモデルチェンジすべきだった。しかし今の需要では、軽商用車に独自のプラットフォームやサスペンションを与えたら採算が取れない。N-VANと競合するスズキ「エブリイ」やダイハツ工業「ハイゼットカーゴ」は独自の設計だが、それぞれ複数のメーカーにOEM(相手先ブランドによる生産)供給しているから成り立つ。ホンダはOEM関係を持たないことからアクティバンを廃止して、N-BOXをベースにN-VANを開発した格好だ。

アクティバンの荷室長は1725mmだが、N-VANはボディの前側にエンジンルームがあるから、荷室長を1510mmしか確保できない。この重大な欠点を補うため、左側のピラーをドアに内蔵させたり、助手席を小さく畳めるようにしたりした。

いわば苦肉の策だが、この工夫がファンを生んだ。後席と助手席を畳んで左側のドアを全開にすれば、ボディの側面とリアゲートの両方から荷物を積んだり、車内に出入りしたりできる。駐車時には風通しのよい小部屋という感覚で、趣味の空間としても気持ちよく使える。

エンジンは動力性能の高いターボも用意され、ノーマルエンジンでは、ホンダの軽スポーツカー「S660」用に開発された6速MTを選択できる。ギアの入りもよく、軽商用バンなのに小気味いいシフトワークを楽しめる。仕事に使う軽商用バンでありながら、面白い要素をちりばめた。

価格はLEDヘッドランプなどを備えたプラススタイルファンホンダセンシングが6速MT、CVT(無段変速AT)ともに156万600円だ。このターボ仕様は166万8600円になる。

運転の楽しいスポーティーカー

200万円以下で運転の楽しいスポーティーカーとしては、スズキ「スイフトスポーツ」が注目される。全長3890mm、全幅1735mmというコンパクトなボディに、直列4気筒1.4Lターボエンジンを搭載した。最高出力は140馬力、最大トルクは23.4kg・mだ。動力性能をノーマルエンジンに換算すると、2.3L並みになる。

1.4Lの小排気量ターボは、フォルクスワーゲンなどの欧州車が多く採用する手法だ。軽量化に力を入れて、車両重量は1トンを下回るから、加速性能に余裕がある。

トランスミッションは、6速MTと6速ATが用意されている。ATも有段式だから、CVTと違ってエンジン回転と速度の上下動がつねに一致する。ダイレクトな運転感覚を味わえて、速度の微調節もしやすい。

足回りに使われるショックアブソーバーは名門のモンロー製で、優れた走行安定性と、コンパクトカーとしては快適な乗り心地を両立させた。

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