「独裁者」川淵三郎が部下だけにみせた真の姿 3年目を迎えたプロバスケ「Bリーグ」の現在地

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また、川淵さんは方向性を提示する際、必ず「根拠」も添えます。私自身、今までいろいろな会社で働いたり支援したりしましたが、方向性を出せるトップがいるだけでそれはもう立派な組織だと思っています。

川淵さんはそこに根拠まで添えられるところにすごみがあります。数々の修羅場をくぐり抜けた80年におよぶ人生経験によるものだと思いますが、多くの人を惹きつける魅力を備えた、いい意味での「人たらし」でした。

リーダーは背中で語る

そして、「メディアで見ていた以上に熱量が高い!」ということ。それは日本のスポーツ界の発展を真剣に考えているからだと思います。メディアでも報じられているように川淵さんはバスケ界から1円ももらっていません。完全に無報酬。

会議の際の車代や、選手・スタッフとの懇親費用や、国内外の要人接待などで持ち出しも多いと聞きます。私利私欲を捨て、損得は考えず、成功を信じ、行動に情熱を込め、圧倒的な行動力と熱量でバスケ界を引っ張っていく姿勢は「リーダーは背中で語る」を体現していました。

無報酬で全身全霊をかけ、B.LEAGUE、ひいてはスポーツ界を発展させたいという想い……その熱量にスタッフが引き込まれ、ステークホルダーへと波及したからこそB.LEAGUEは成功したのだと強く思います。

川淵さんはバランスが取れたリーダーでした。信念に基づいた「譲れない基準」を明確に示したうえで、異なる立場、多くの人を巻き込み、圧倒的な行動力で大きな波にしていく……。

すべてにおいて独裁者ではなく、自分の立場は、あくまで組織を動かすための役割のひとつであると考え、われわれ世代の感性も受け入れてくれました。そのため、イノベーションを起こすべき部分に集中することができました。日本という社会は「独裁者」という言葉を嫌います。

しかし、川淵さんはいつもこう言っていました。「大きく変革していくときには、独裁者は必要。ただし、私利私欲をもっては絶対にならない」。

川淵さんの身近で仕事をし、何が良かったのか? それは真のリーダー像とはどういったものかを近い距離で体感することができたことです。そして、ディスカッションするなかで投げられた多くの川淵語録は自分の財産になりました。いくつかをご紹介します。

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