JR東が実演「指差し確認」は世界で普及するか 独国際見本市、日立は規模拡大の秘策を披露

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中国中車が出展した次世代型都市鉄道車両「セットロボ(CETROVO)」(記者撮影)

車両メーカーの中で世界の注目を最も集めたのは中国中車だ。次世代型都市鉄道車両「セットロボ(CETROVO)」は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)をボディや台車に採用、大幅な軽量化を実現した。過去のイノトランスでは中国の鉄道関係者が欧州製の展示車両を入念に観察する姿が目立ったが、今回は欧州の鉄道関係者がセットロボを詳細にチェックしており、立場が逆転した。

台車にCFRPを採用する例は川重なども行っているが、ボディにCFRPを使うとなると極めて異例だ。ある国内大手鉄道会社の車両開発担当者は「軽量化メリットは魅力的」としながらも、「耐久性、固有振動、亀裂が生じた際のメンテナンスなど不透明な点が多い」と語る。国際規格に詳しい専門家は「厳格な欧州の規格に合致するのか」と首をかしげる。

中国中車のブースには、高速鉄道車両の模型が展示されていた(記者撮影)

セットロボは時速140kmでの自動運転を行い、ブレーキも電気自動車などで使われる電動式を採用。さらに車内では窓枠を巨大なタッチスクリーンとして活用し、巨大なiPadのようにさまざまな情報を映し出す。鉄道会社が運行情報や広告を表示するだけでなく、乗客がチケット予約やネットサーフィンをしたりすることができるという。

年内に走行実験が予定されているが、営業運転の開始時期は未定だ。「開発中の技術をふんだんに詰め込んだプロトタイプ的な車両」(中国中車の担当者)というから、路線の特徴次第では採用されない技術もありそうだ。

次回は高速鉄道車両を出展か

とはいえ、そのまま実用化されない車両だとしても、実物をはるばるベルリンまで持ち込んだ意気込みは日本にとっても脅威だ。日立は中国中車をどう見ているのか。日立のドーマー氏は「中国中車は中国では一緒にJVを行うこともあるパートナーだが、世界ではライバルだ。しかし、当社はIoT(モノのインターネット)プラットフォームなどグループ内の高い技術力を活用できるという強みがある」と語る。都市鉄道や近郊鉄道で両者が激突する局面はありそうだ。

イノトランスの名物は実車の屋外展示。例年と違い、新型高速鉄道車両の姿が今回は見られない。スピード追求の時代は終わったという声も聞かれる。

大勢の来場者でにぎわうイノトランスの屋外展示(写真:イノトランス)

しかし、ドーマー氏はこの見方を否定する。「鉄道産業の中でも高速鉄道はセクシーな分野だ。市場規模は都市鉄道などの市場よりも小さく全体の1割しかないが、誰もが新幹線やTGVに注目している。新幹線N700S、インド高速鉄道、テキサス高速鉄道、英国「HS2」など重要なプロジェクトが目白押しで、当社は都市鉄道などと同様、高速鉄道にも力を入れて取り組んでいる」。

次回のイノトランスで日立も高速鉄道車両を展示したらどうかという質問に、ドーマー氏は「OK。見られるかもね」と笑って答えた。ひょっとしたら、次回、2020年のイノトランスでは、日立と中国中車が製造する高速鉄道の実車が競演するかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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