一部のインフルエンサーが袋叩きに遭う必然 カンヌライオンズでも話題の中心に

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今年はまた、マーケティング各分野の再編成がトレンドとなっているようだ。トップのマーケターたちは、プラットフォームの巨大な力に対して抵抗しつつあり、彼らの予算がどこに一体使われているのか、疑問の視線を向けている。またエージェンシー、そしてプラットフォームからコントロール力を自分たちへ取り戻そうとしている。

カンヌライオンズで、エコノミストが18日に主催した「ウェークアップ・ウィズ・ザ・エコノミスト」というイベントでは、イーベイの最高マーケティング責任者であるゴダート・ヴァン・デデム氏が、「インフルエンサーに対して費やしていた支出」をイーベイ上の売り手ユーザーたちへとシフトすることを試すと発言している。彼によると、インフルエンサーよりも売り手ユーザーの方が優先されるべきであり、イーベイのブランドにとって、より真実味があるとのことだ。「投稿するためにおカネを支払っているインフルエンサーよりも、売り手ユーザーたちに発言力を与えたいと思っている」と、彼は言う。

重要なのは創造性

サムスンの最高マーケティング責任者であるマーク・マシュー氏は、最近広告にユーチューバーであるキャセイ・ネイスタットを起用した。だが、彼によると、それはキャセイが持つインフルエンス(影響力)ではなく、キャセイのクリエイティビティが理由だという。「ただインフルエンサーを使うということはしたくない。実際に我々のプロダクトを使う人たちを使ってマーケティングしたい」。また、ディアジオの最高マーケティング責任者であるシル・サーラー氏は、ディアジオは有名人を起用することはあるが、フォロワーを購入するといった行為を行っているかもしれないインフルエンサー契約については今後、批判的に見ていくと述べている。

インスタグラムで数年前に爆発的に成長したインフルエンサーマーケティングは、広告よりもリアルに感じられると考えるマーケターたちの存在で人気を得た。インスタグラムは、いわゆるソーシャルのスターが好んで使っているプラットフォームだ。しかし、そこでの真実味をでっち上げることができる。偽証行為対策を提供する企業スウェイ・オプスによると、インスタグラム上で #sponsored や #ad とタグ付けされている投稿1日分を取り上げてみても、その半分以上は偽のエンゲージメントを抱えていると言う。11万8007のコメントを対象にスウェイ・オプスは調査を行った結果、ボットでないフォロワーによるものは2万942しか存在しなかった。

カンヌライオンズがはじめてソーシャルインフルエンサーのライオンズ部門を設立した年に、こうしたバックラッシュが噴出しているのは皮肉だ。カンヌ主催側の説明によると、これらの部門は「クリエイティブなソーシャル思考を祝う」ために設立されたとのことだ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)

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DIGIDAY[日本版]編集部

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