ブルー・オーシャン戦略の知られざる本質 革新もいずれはマネされ競争にさらされる
それに対してシルク・ドゥ・ソレイユは従来のサーカス団とは大きく異なる演目を観客に提供した。動物のショーは行わず、ストーリーやテーマ性を持たせることで演劇やバレエのような芸術性を取り入れ、サーカスの何倍も高い料金で観客を呼ぶことに成功した。シルクはサーカスであり、演劇であり、バレエの要素もあり、つまり従来のカテゴリでは分類できないパフォーマンスを観客に提供した。
ブルー・オーシャン戦略は「競争のない市場でビジネスをする」と説明されることもあるが、これは大きな間違いだ。ライバルと競争をしないようにビジネスを行うことは間違いないが、「競争者のいない新しい市場を創造して、競争を無意味にしたのである」と本書で説明されているとおりだ。新しい市場を自ら作り出した企業のみがライバルのいない市場、ブルー・オーシャンにこぎ出せる。
シルク・ドゥ・ソレイユのブルー・オーシャン戦略
本書では新しい市場を作り出すためのヒントが多数解説されているが、最も重要なポイントがコストと差別化(品質)のトレードオフを壊す手法だ。
一般的に、高品質な商品・サービスを提供するにはコストがかかる。一方でコストを抑えれば品質が下がる。このようなあちらを立てればこちらが立たず、というトレードオフを打ち壊すのは極めて困難だ。
結果的に多くの業界で似たような商品が似たような価格で提供され、ブランド表記やタグを隠してしまえばどの企業が作った物かわからなくなってしまう。そして顧客は価格で商品を選ぶようになり、企業は高品質な商品を提供しているにもかかわらず価格競争の消耗戦を強いられる。これが血みどろの競争が行われる「レッド・オーシャン」と本書で定義される市場だ。
そこでコストと品質のトレードオフを壊すために示されているのが以下の4つのアクションだ。
Q2)業界標準と比べて思いきり減らすべき要素は何か
Q3)業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か
Q4)業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か
(出所:ランダムハウス講談社『ブルー・オーシャン戦略』より抜粋)
製品やサービスから無駄な要素を取り除き、減らす。そして必要な要素を増やし、付け足す。このシンプルな4つのアクションでトレードオフを壊してイノベーションを起こすことは可能だ。シルク・ドゥ・ソレイユは従来のサーカスから以下のようなアクションでイノベーションを実現した。
花形パフォーマー、動物によるショーなど
笑いとユーモア、危険やスリル
個性あふれる独自のテント
テーマ性、芸術性の高い音楽とダンスなど
(出所:『ブルー・オーシャン戦略』より、一部省略)
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