「のぞみ」台車亀裂、2つの原因は"人災"だった 製造、運行管理、得意の「現場力」でミス続発
新神戸到着時、保守担当者は車外で13号車の車体とホームの間を懐中電灯で照らして目視で確認したが、異常は感じなかった。それに続く、新神戸―新大阪間での指令員と保守担当者のやり取りはこんな感じだ。
指令員「走行に支障がある感じではないか」
保守担当者「判断できかねるので、走行に異常がないとは言い切れないかな」
指令員「台車関係かどうかというのは疑わしいけれど、わからないということですよね」
保守担当者「そうですね。はい」
指令員は、保守担当者は本当に危険があれば「危険だ」と伝えてくると思ったという。結局、指令員は走行に支障がないという判断を変えないまま、のぞみ34号は新大阪に到着。保守担当者は下車。車掌や指令員はJR東海(東海旅客鉄道)への引き継ぎの際、異音や異臭がしたが運行に支障がないことを伝えた。
運行を止める判断の難しさ
現場で危険を察知しながらなぜ列車を止められなかったのか。その原因を解明するためJR西日本は、有識者会議を設置して、あらためて関係者にヒアリングを行うなどの調査を実施しており、最終報告書は3月下旬にまとめられる予定だ。
有識者会議の座長を務める安部誠治・関西大学教授は、2月26日に行われた第3回の会議後、「現場の保守担当者は少々おかしいと感じながらも、自信を持って、すぐに列車を止めて検査する必要があると言うところまでは至らなかった」と述べた。そのうえで、「内心思っていても明確な言葉で発していないので、指令としては止めなくても大丈夫という判断になったようだ」と説明している。
危ないと思ったら、迷わず止める。スローガンとしては正しいが、実際に行うのは簡単ではない。列車を止めれば運転再開に時間を要するし、後続列車にも影響が出る。もし、列車を止めて調査したが、そのまま運転しても支障がないという結果が何度も続いたら、かえって利用者に迷惑がかかる。そのため、安部教授は「保守担当者が異常を見極める力をつけるべきだ」と指摘している。たとえば、異音の事例を集めて保守担当者に聞かせるなどの方法が考えられるという。
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