混迷する米財政問題、解決シナリオは? 議会での特別委員会設置なら、問題の先送り
[ワシントン 3日 ロイター] - 米国の中央政界は危機を抜け出すよりも危機にはまり込むのが得意であるとはいえ、議会とホワイトハウスは過去20年にわたって何回も、深刻な政治的行き詰まりの状況から彼ら自身と国家を何とか救い出してきた。
その際の常とう手段は委員会の設置など将来動くことに合意する「先送り」を行うことで、与野党ともに政治的な勝利を宣言しながら具体的な成果は保証されない。
今回の予算問題に関する政治停滞は政府機関の大半が閉鎖される事態を招いているが、17日に連邦債務の法定上限を引き上げる必要をめぐる論争と合体すれば、米国のデフォルト(債務不履行)につながる恐れも出てきた。
そして共和党保守派が医療保険改革(オバマケア)の先送りないしは予算停止という、民主党側にとって交渉不能な要求を突き付けているという点で、過去の政府機関閉鎖とは様相が異なっている。
政府機関閉鎖を終わらせるためのいくつかの手段が議論されてきており、これらの手段を組み合わせることも可能だ。ただしどれが事態打開につながるかを判断する手掛かりは今のところ見当たらない。
具体的な内容は次の通りだ。
◎共和党の面子を立てる方法
保守派の共和党議員は、オバマケアの反対闘争において何か勝利の証が必要だと考えている。
下院共和党は既にオバマケアの予算停止という当初の要求を、実施の1年先送りとオバマケアの財源となる医療機器への課税の撤廃を求める方向に軌道修正した。
もし医療機器課税撤廃案を、より過激な他の反オバマケア提案と切り離せば、医療機器産業の雇用が多い州で選出されている民主党の上院議員にはある程度アピールする可能性がある。
ただそれはオバマケア向けの財源から約300ドルを削る、事実上の予算停止となる。オバマ大統領はそうした事態は受け入れられないと明言している。
共和党は、公平性の観点からオバマケアの議員や議会スタッフに対する特別扱い廃止も提案するとみられる。
これが認められても共和党にとしてオバマケアに対するささやかで象徴的な勝利にとどまり、保守主義草の根運動の「ティーパーティー(茶会)」系の下院議員のほとんどを恐らくは満足させられないし、政府機関を閉鎖に追い込んでいる要求を取り下げるほど面子を立てることもできず、ましてや債務上限への抵抗をやめさせるのは無理だろう。
◎付帯条件なしの予算案承認
今年度予算法案からオバマケアを阻止するための条項を除いてしまえば、政府活動への資金が手当てされ、政府機関閉鎖には終止符が打たれる。
しかし現時点では、こうした法案が確実に成立するには下院で20人前後の共和党穏健派議員と200人の民主党議員の大半が手を組んで共和党保守派議員の希望を打ち砕くしか道はないように見える。
それは共和党のベイナー下院議長が法案を本会議で採決にかけることを認めない限り実現しないが、議長はほとんどの共和党員にとって好ましからざる形で政府機関閉鎖を終わらせることになるこうした手続きを進めることに抵抗している。
もし強行すれば共和党議員の間に深刻な溝が生まれて、政府機関閉鎖をてこにした議会戦術は失敗とみなされ、議長の立場が揺らぎかねない。
◎大波乱の懸念が歩み寄りを促す展開
多くの有力共和党議員は、予算問題と債務上限問題を一体化して交渉したい意向だ。
政府機関閉鎖では混乱や不便が生じているが、まだ危機が訪れているというムードは広がっていない。ただ、米政府がデフォルトに陥ったり単にデフォルトのうわさが出回るだけでも、金融市場に恐怖感を引き起こす。それは巨大な嵐だ。
理論的には政治家の間に、市場の崩壊とそれに伴う国民の反発への懸念が高まれば、与野党ともにもっと真剣に交渉して合意が形成される可能性が出てくる。
2011年の債務上限引き上げをめぐる危機においては、与野党が財政赤字削減に取り組む特別委員会を立ち上げることでまとまった。もっとも委員会は赤字削減策を策定できず、新たな危機を呼ぶだけに終わった。
今回の場合は、議会における常設の委員会を通じて対応策を策定する可能性の方が大きい。
議会はごく短期間のつなぎ予算案を承認することで足並みをそろえて、政府機関を再開し、債務上限を引き上げ、与野党間に存在する財政上のあらゆる意見の違いは上下両院の合同委員会に持ち込む可能性がある。
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