カシオ「高級Gショック」、こだわり生産の裏側 国内唯一の時計拠点、山形工場に潜入

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機能面だけではなく、意思疎通を図り山形工場で一体となって生産できるのも新工場の狙いだ。これまで金型・部品工程では時計の組み立ての様子を見ることがなかったため、金型の大半が時計向けだったにもかかわらず、「時計を造っている」という意識が薄かった。最終製品に近い側の「市場の要望に応えたスピードでモノを出したい」という意図が伝わりづらかった。

山形カシオは、時計の金型製作から最後の組み立てまで敷地内で完結させる、垂直統合型生産にこだわってきた。新工場では全工程を1つの建屋に集めることで、一層強化される。

ブランド力は本当に上がるのか

山形カシオの社屋。ここを起点とするブランド改革は実を結ぶのか(記者撮影)

ブランドコンサルティング会社、インターブランドジャパンの並木将仁社長は、「垂直統合生産の機能的価値が今見直されている」と指摘する。一昔前はさまざまなサプライヤーから部品を調達する「水平分業」が効率的とされていた。だがすべてを内製にすれば、必要だと思う部品を自ら造ることができる。製品を出すまでのリードタイムも短くなり、市場のニーズを製品に素早く反映できるようになる。

実際にブランド力は「メード・イン・ヤマガタ」で高まるのか。並木氏は、「カシオの製品はもともと機能性の高さのイメージが強い中で、山形工場は品質のよさを押し出している。すでに世間に広まっているイメージを強調することで、高いおカネを出してもらうだけの付加価値につながるのかは疑問が残る」と話す。

国内外の多くのブランドがひしめく時計業界で、新たなイメージを確立するのは容易ではない。”ポストGショック”となる時計を育てることはできるか。新工場の稼働は、ブランド育成の長い道のりの出発点にすぎない。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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