【産業天気図・医薬品】大手新薬メーカーはM&Aなど先行投資で雨。後発品は新薬出身メーカーに軍配か
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
医薬品業界は2008年度後半から09年度前半を通して「雨」が降り続きそうだ。
平均5.2%の薬価引き下げが行われた2008年度は各社にとって、かつてないほど厳しい年となっている。中でも、ARB製剤(降圧薬)の引き下げ幅は10%に上り、同製剤を主力品とする第一三共<4568>や武田薬品工業<4502>、アステラス製薬<4503>には打撃となった。さらに、円高も直撃。大手各社の海外売り上げが年々膨らむ中、ドルベースでの売り上げが拡大しても、円換算すると減収減益となる状況に陥っている。
ただ、厳しい環境下でも、M&Aなど研究開発投資は増加傾向にある。主戦場の米国で主力製品の特許切れが迫っているためだ。自由薬価制の米国では、特許が切れたとたんに、薬価の安い後発医薬品が台頭してくる。例えば、武田の「タケプロン」(潰瘍薬)は09年11月、アステラスのハルナール(排尿障害薬)は10年4月に、米国での特許が切れる。また、エーザイ<4523>の「アリセプト」(認知症薬)は、開発中の小児用製剤が承認されても特許期間は半年延長さるのみで、11年5月には特許が切れる見込みだ。(特許切れ年月は東経オンライン推定)。
新たな医薬品開発を視野に海外企業とのM&Aも加速している。4月に約8800億円で米ミレニアム社を買収した武田は、ガン領域での新薬開発を狙う。また、エーザイも米MGI社の買収でガン領域の拡充を図る。現在、アンメット・メディカル・ニーズ(満たされない医療ニーズ)のトップであるガン領域で画期的な新薬が出れば、多大なリターンがかえってくるのは間違いない。が、医薬品開発のみに注力するのはハイリスクという見方もある。そんな中、第一三共のインド後発品大手ランバクシー買収は「新興国」と「後発品」へと視野を広げた点で、新しいM&Aの形だといえる。
もっとも、海外事業の拡大に伴う先行投資や買収費用の償却、研究開発費などががかさむため、当面は各社とも業績的には厳しい状況が続きそうだ。第一三共は9月に承認を見込む「プラスグレル」(抗血小板剤)の米国販売体制確立に向け、先行投資が重く今09年3月期は減収減益予想。そのほかの大手メーカーも08年度から09年度にかけては、費用先行の厳しい決算が予想される。
一方、4月に政府が促進策を投入した後発品市場では、今後淘汰が進みそう。7月に特許切れした降圧薬アムロジピンの後追い市場には、34社が参入した。日本ケミファ<4539>や明治製菓<2202>、あすか製薬<4514>といった新薬出身メーカーの売り上げが順調な一方、後発品専業メーカーの売り上げは思ったほどではないもよう。利幅の薄い後発品については、数量の確保が絶対条件となる。ここ1~2年中にも見えてきそうなシェア争いの結論を、注視する必要があるだろう。
【前野 裕香記者】
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