定年退職後におカネで失敗しないための心得 退職金を大切に、現役時代の金銭感覚は危険

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老後資金に余裕がないとわかれば、再雇用や再就職といった選択も浮上するでしょう。仮に生活費が300万円かかるとします。働かなければ、まるまる300万円が出ていくだけです。一方、働いて200万円の収入を得られたなら、支出は100万円で済みます。

3年間働いたとすると、家計の収支に600万円もの違いが出るわけです。この差は大きいです。60歳前より給料が下がったとしても、働くことで明らかに家計は助かることになるのです。

「せっかくのんびりできると思っていたのに……」と考えていた人には恐縮ですが、定年後におカネを増やすのはなかなか難しいといえます。老後資金が切羽詰まってからでは対処法にも限りがあるのです。

長生きする分おカネも必要

近頃は、「老後破産」「下流老人」などという言葉もよく耳にします。長寿の時代とあって第二の人生を楽しむ時間が増えるのはうれしい反面、長生きする分おカネも必要になります。高齢者の生活苦は、いまや深刻な社会問題の1つです。

老後破産を引き起こす原因としては、次のようなものがあげられます。

・中高年からの思わぬ収入の減少
・医療費がかさみ、蓄えがなくなった
・金銭感覚を変えられず、収入に見合わない生活をした
・子どもが面倒を見てくれなかった
・退職後も住宅ローンが残った
・退職金が思ったより少なかった

これらは誰にでも起こりうる問題ですが、みながみな「貧乏定年」になるわけではありません。

「そりゃあ、蓄えが豊富な人は困らないだろう」と思いますか。実は、明暗を分けるもっと大きなポイントは、おカネを計画的にコントロールしているか否かにあるといえます。

意外なことに、収入が少なくても生活を切り詰めながらやり繰りできていた人は、定年後もあまり困窮しません。逆に、現役時代に年収が1000万円を超え、生活が派手だった人ほど貧乏定年になりやすいのです。

彼らは節約とは無縁の暮らしを送ってきました。定年後に収入がガクンと下がっても、おいそれとはギャップに対応できません。いままでと同じようにおカネを使いまくっていたら、毎月大赤字になって当然です。

たとえば、年金が年額で300万円、貯蓄が5000万円あるとします。これほど潤沢な資金があれば、普通はゆとりのある暮らしができます。

『金持ち定年、貧乏定年 55歳から始める得する準備と手続きのすべて』(実務教育出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ですが、1年間に800万円を使い続けたらどうなるでしょう。毎年500万円が貯蓄から出ていくのですから、10年しか持ちません。あとは年金300万円だけの生活になります。

ライフスタイルを見直せばなんとか暮らしていけるでしょうが、現役時代の金銭感覚を変えられず、老後破産に至るケースは多いのです。

もっとも、収入の多寡に関係なく、この心理は誰にも当てはまります。長年維持してきた生活レベルは、そう簡単には落とせません。だからこそ、早めに現状を把握し、対策を立てることが大切になってきます。足りない分を積み上げる、無駄を省くなど事前に手を打っておくことができれば、老後破産は避けられるはずです。

長尾 義弘 NEO企画代表、ファイナンシャル・プランナー

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ながお・よしひろ / Yoshihiro Nagao

お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『かんたん!書き込み式 保険払いすぎ見直しBOOK』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『コワ~い保険の話』(宝島社)などがある。
http://neo.my.coocan.jp/nagao/

 

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中島 典子 税理士、社会保険労務士

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なかじま のりこ / Noriko Nakajima

創業から財務会計・資産形成・相続事業承継までのトータルサポート業務、FP関連書籍等の執筆、講演、子どもからシニアまでの金融経済教育で活動中。著書に『会社が知っておきたい補助金・助成金の活用ガイド』(大蔵財務協会)、共著に『いまからはじめる相続対策』(日本実業出版社)など。http://tax-money.jp

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