ソフトバンクの「白戸家」が根強い人気のワケ 祖母と孫のつながりを描いたCMもランクイン

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2007年に新料金プランの「ホワイトプラン」が発表され、さらに家族間の国内通話が24時間無料になる「ホワイト家族24」の新料金プランから、ホワイト家族→「白戸家」がスタートする。母が樋口可南子、娘が上戸彩、父が「犬」、兄が「外国人」のダンテ・カーヴァーという「予想外」な家族「白戸家」のCMはいきなり大ヒット。

その後はタイムリーな時事ネタや旬なゲストの登場、他業種とのコラボ、イベントやメディア連動など、テレビCMのあらゆる可能性に挑戦しながら、60回を数える作品別月間CM好感度ナンバーワンを獲得する国民的人気シリーズとなっていった。

「白戸家」のCMを2007年の立ち上げから手がけている、シンガタのクリエイティブディレクター、佐々木宏氏は「白戸家は、実は結構低予算のかなり短時間で苦し紛れに作ってスタートした企画だった(笑)」と2012年に語っている。ソフトバンクの孫正義社長から「家族同士通話24時間無料のCMを大至急作れ」と言われたものの、複雑な料金サービスを短い秒数の中で説明するのは困難な作業だ。

しかし、佐々木氏は電通のプランナー、澤本嘉光氏と「とはいえ、やっぱり面白くしたい」と粘り「いっそお父さんを犬に」「ダンテをお兄ちゃん役に」「声だけは華麗なる一族の北大路欣也さんに」など、それまでバラバラに契約していたタレントを強引に家族にしたり、斬新で大胆な提案をしたようだ。この企画に「GO」を出した孫社長の慧眼もさることながら、「白戸家」は佐々木氏や澤本氏の想像を超えて、まさに予想外に大化けしたCMシリーズとして成長していくこととなった。

佐々木氏は「ピンチはチャンス」という言い方は好きじゃなく、「ピンチはクイズ」なのだと言う。ピンチに遭ったら、少しでも楽しむことを考える。「ハイ、それでは問題です。こういうピンチは、どうやって逃れればいいでしょう?」と3択クイズにすると、つい答えてしまう。「誰かに言われたややネガなことをポジティブにとらえて100倍にして返すことでアイデアが化ける」のだとも話す。

白戸家シリーズの大胆な奇襲作戦

シリーズCMの課題は時間の経過とともにマンネリ化して急速に視聴者から飽きられてしまうこと、と前回「au『三太郎』CMが3年目でも飽きられない理由」に書いたが、まさに「白戸家」シリーズはこの壁と長年戦ってきた。そのたびにアイデアと勇気で何度もこの高い壁を乗り越えてきたが、10年目という節目に、大胆な奇襲作戦に出たようにも思える。

CMの注目点は「白戸家」シリーズの継続か、終了か。そのこと自体が大きなインパクトになるのは、10年続いた人気シリーズだからこそできること。まさに「ピンチはクイズ」。ハイ、それでは問題です。「白戸家は本当に終わってしまうのでしょうか?」と視聴者に問いかけている。

その後、「白戸家」シリーズの継続が発表されると、またまた大きな話題となった。案の定、視聴者は驚き、気にかかり、盛り上がる。否が応でも次の展開が気にかかってしまうのだ。今後も「新・白戸家」には目が離せない。

11月8日から放送を開始しているソフトバンクのCM「古田の説明」篇。
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