量子コンピューター、来年度予算に32億円 米国先行に危機感
[東京 31日 ロイター] - 次世代コンピューターの開発競争が過熱している。米IBM<IBM.N>などが本命とされる量子コンピューターの開発競争でリードする一方、NTT<9432.T>など日本勢は「組み合わせ最適化問題」の解決に特化したコンピューターで一足先の実用化を目指している。
だが、将来の産業社会で主導権を握るには「本命」の開発は避けて通れない。危機感を持つ文部科学省は来年度予算の概算要求に光・量子技術の推進費として32億円を盛り込んだが、欧米に比べ1ケタ少なく、研究者の間からは予算の格差を危惧する声も聞かれる。
限界打破の決め手
「半導体の集積密度は、18カ月で2倍になる」というコンピューターの性能向上を支えてきたムーアの法則。だが、半導体の微細化は限界に近づき、最近ではその終えんもささやかれるようになってきた。
この状況を打破する決め手として注目されているのが、量子コンピューターだ。
従来のコンピューターでは、0か1のいずれかの値をとるが、量子コンピューターは0でもあり、1でもあるという量子力学の「重ね合わせ」という概念を利用するため、複数の計算を同時にできるのが特徴だ。
基本単位は「量子ビット」と呼ばれ、量子ビットの数をnとすると、最大で「2のn乗」通りの計算を同時に行える。